投稿日:2020年03月23日 更新日:2023年03月30日

ビルの大規模修繕で大切なこととは? 建物の資産価値を長く保つために

カテゴリ大規模修繕

建物には税法上、耐用年数があり(建物によって異なるが新築鉄骨鉄筋コンクリート造の場合47年)、建てた直後からその資産価値は下がっていくと言われます。
たとえば汚れや破損、漏水といったトラブルなど、使用していなくてもビルの劣化は進んでいきます。ビルを長く快適に保ち、資産価値を維持するためにも、大規模修繕工事はとても大切です。

建物修繕イメージ

マンションと商業ビルのそれぞれの大規模修繕

大規模修繕における運営主体の違いについて

分譲マンションの場合は、管理組合で管理会社に委託してマンションを管理している場合が一般的です。そのためマンションで大規模改修を行う場合は、管理会社を中心に「修繕委員会」などが設置され修繕計画が立てられることが多いです。
一方、賃貸マンションおよび商業ビルは、ビルオーナー様が個人または法人であるかによっても異なってまいりますが、建物の設計者または管理会社に依頼し、改修提案を出してもらい修繕計画を立てます。

建物によって異なる大規模修繕

立地や状況・建物は、ひとつとして同じものはなく、それぞれ特色があるため、建物ごとに大規模修繕のやり方が異なります。

たとえば、居住者がいるマンションは、日中作業を原則とします。夜間工事は原則行いません。商業ビルでは、使用状況により夜間作業で改修を行うことが多くあります。

また足場が必要かそうじゃないかでも異なります。

大規模修繕の業者によっては「なんでも安くやります」といったところがありますが、 修繕の中でも部分的にしか得意でなく偏りがある業者も多いので注意が必要です。

どういうことなのか、次に解説してまいります。

ビルの大規模修繕に必要なのはアレンジメント力

修繕の内容が多岐に渡るビルの大規模修繕の場合、大規模修繕を行う業者に必要なのは、協力業者の選定すなわちアレンジメント力です。

「シールに強い」「金属製パネルに強い」「装飾工事に強い」「電気・設備をやり慣れている」等、施工業者による得意不得意があります。しかしネット上には、特定の専門業者が、「全てまとめて大規模修繕を請け負います」といったケースも見受けられます。

その業者さんの専門分野の工事が殆どであればいいのですが、多くの大規模修繕では複数の工事分野が絡むため、技術面でもコスト面でも工事個所毎に的確さをビルオーナー様側でチェックできないと、無駄な工事をやらされたり、必要な工事ができていなかったりとチグハグな結果になりかねません。

そうした場合、一見費用は安いけれど5年後も良好な状態が保たれているかわからない、あるいは、その部分は足場を組む大規模修繕でなくても良いので、通常の修繕タイミングで修繕可能なのにまだ使える設備まで無駄に早く修繕させられていた、といったことが起こり得るのです。
つまり大規模修繕を行う業者は、本来は、総合的に建築全体がわかっていないと、適正価格で、かつ的確な工事ができないのです。

何でもできます、という売り文句通りに信頼できる業者さんもあるとは思いますが、工事内容毎に良い工事業者をアレンジし、全体の修繕内容をチェックできるネットワークとノウハウがあり、費用対効果の高い工事を提案し、実施完了までマネジメントしてくれるアレンジメント能力を見て業者を選ぶという方法もあるということです。

大規模修繕を行うにあたり費用を抑えることはもちろん大切ですが、大切なのは「大規模修繕工事」というものは「足場を組む」という建物とは直接関係のない部分で大きな費用がかかる工事であるということです。「今回は何をどこまでやるか」、という長期修繕計画の中で10~15年に1度の節目に当たるとても大事な工事なのです。

従って、建物全体の適確な診断を行った上で、表面的、一時的に安く感じても長期的に高くついたり、やるべき工事をやらずに総額を安く感じさせて、結局、足場を組む大規模な修繕工事を予想以上に早くやらざる得なくなって、結局は高くつく、といったことにならないように、トータルに費用対効果の高い適確な改修を行うことが大切と言えるでしょう。

ビルの修繕にかかる期間

建物の修繕、改修工事を行う場合、かかる期間はビルの規模、施工する内容により異なります。

建屋そのものの劣化状況(コンクリート、シーリング材、防水層、鉄部、塗装等)や、外壁の仕様(タイル貼り、塗装、吹付け、パネル等)、屋上の仕様(アスファルト防水押え工法、アスファルト防水露出工法、防水シート張り、塗布防水)、等により一概には言えませんが、建築工事のみ、屋上防水・外壁補修で3~6ヶ月程度 特殊な物で~8ヶ月程度かかることが多いです。
電気設備、空調換気設備、給排水管など衛生配管設備等の更新工事を行う場合も建築工事の期間プラス1~2ヶ月かかります。 これはあくまで、施工開始からの工期です。

また調査・基本計画立案から実施計画作成までに、建物の規模・得意先の要望等によりオーナー様とのお打ち合わせ調整を含め半年から1~2年かかります。時間はかかりますが、実はこの調査・基本計画立案が非常に重要です。

修繕・改修工事における長期修繕計画の重要性

多くのビルの場合、長期修繕計画(LCC・ライフサイクルコスト)があらかじめ作られている場合は多くありません。

そのため、ビルの大規模修繕を行う場合、まず基本的な修繕周期に合わせ建物の仕様・設備項目をあてはめ、改修履歴等を参考に修繕計画を作成します。 その後、見積もりを提示し、予算との調整を行い、改修する項目を確認調整します。 会社によってやり方は異なるかと思いますが、大規模修繕工事と合わせて「建物の記録を作ること」も同時に行う事は、とても大切です。

何かトラブルがある度に、場当たり的に修繕を行い、記録を残しておかないと建物の現状を把握できず、建物の価値を保つことが出来ません。 そのため、大規模修繕工事をする際には、状況がどうなっているのか、今までどういった修理をしたか、調査するところから始まり、記録を探っていきます。 記録があると、次に何かしたいときにもスムーズに対応することが可能です。

まとめ

ビルは立地・規模・用途・仕様等により異なるため、修繕工事に決まりきった工法はありません。 大規模修繕を行う時期に関してもビルごとに異なりますが、一般的には竣工してから10年~12年経ったら改修工事を行うとよいと言われています。

さらに5年に1度は設備状況や建物のチェックを行い、計画の見直しを行うとより修繕計画の精度が高められるでしょう。 大切なビルの資産価値(建物の健全化)を保つためにも、定期的なメンテナンスや改修・修繕工事を行っていきたいですね。

<設備類チェックの目安例>

設備 目安
照明器具 10年(日本照明工業会による目安)
給排水ポンプ類 7~10年(メーカーによる取替の目安)
給水排水配管 30年
給水メーター 8年が有効期限(計量法施行令により)
電気メーター 3・7・10年が有効期限(計器の種類により異なる)
エレベーター 30年