投稿日:2019年09月05日

ビル管理とは|仕事の内容や種類、ビル管理の資格までまとめて徹底解説

カテゴリビル管理

不動産の運営に不可欠なのがビル管理と言われる仕事です。ビルはただ所有しているだけで、安定的に収益を上げられるものではありません。建物設備のメンテナンスやテナントの募集、賃料の請求など多種多様な業務が発生します。ビル管理会社の業務内容をはじめ、業界動向や関連資格についてご紹介します。

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ビル管理業界について

事業者の種類

管理会社と一口に言っても、会社の成り立ちや特定の業務に特化しているなど、事業者の特徴に種類があります。大きく分けると、主に親会社のグループに属している「系列系」と「独立系」の二つに分けられます。
「系列系」は親会社によってさらに特徴が異なります。親会社のデベロッパーやゼネコンが手がけた物件を主に扱うものや、保有しているアセットをマネジメントする不動産会社の系列、また清掃や内装などを手がける会社が事業を拡大して管理業務全般を行うようになってできた会社など、様々な成り立ちがあります。
「独立系」は系列のグループ会社をもたない会社です。会社の規模や特徴もそれこそ千差万別と言えるでしょう。

 

 

アウトソーシング

ビル管理業務は、一般的に一つの会社が全ての業務を請け負うケースは少なく、業務を細かく分けて別の会社にアウトソーシングすることが多いです。そのような場合、清掃や警備、電気設備の保守など多岐にわたる業務をそれぞれ事業者に振り分けるので、実際には一つのビルの管理を請け負う複数の事業者が業務を行うことになります。

 

 

ビル管理のコストは人件費の占める割合が多い

一般的にビル管理は「労働集約型」サービスであると言われます。「労働集約型」とは売上高に占める人件費の比率が高い産業のことです。要するに人手に頼る業務が多いということです。例えば管理の代表的な業務である「清掃」ですが、窓ガラスやトイレなどをとってみても自動化が難しいのは想像に難くありません。なお働く環境としては、清掃や警備は正社員ではなく非正規雇用も多く見受けられます。
原価のうち人件費の占める割合が多いということは、受注価格が低く抑えられると労働条件や雇用にダイレクトに響きやすく、働く人材の配置等の難しさが業界全体の課題としてあげられます。大手系列系の場合は、本社からの仕事を優先的に請け負うので、極端に低価格で受注することはないようです。一方、低価格で多く仕事を受けることで勝負している独立系の場合は、働く現場の人件費も安くなりがちと言えます。

 

 

3Kイメージ

ビルメンテナンス業務は「3Kイメージ(きつい・汚い・危険)」なイメージをもたれる方が多いと言われます。水漏れや空調の異常などトラブル対応は24時間態勢ですし、汚水槽の点検や高所での作業もあります。商業施設や病院などビルによって稼働時間もまちまちなので、一概に3Kとは言えないかもしれません。しかしいわゆる「裏方」の仕事であるのに加え、特に独立系の中小企業の場合は給与レベルが低いと感じる人も。なかには残業しても残業手当が出ないという会社もあるようです。あくまで大まかな傾向としてですが、独立系よりも大手の系列系の方が残業手当以外にも手当が豊富で、基本給を含む月給や、勤務体制などスタッフの待遇は良いことが多いです。ただし、全国規模で展開している会社では、地方への転勤を伴うこともあります。
総じて離職率が高く、恒常的に人手不足なのに加え、スタッフの需要も増加傾向にあることから、経験、未経験を問わず求人は多いと言えるでしょう。

ビルメンテナンス

設備管理・保守

ビルにはオフィスビルやレジデンスといった種類や規模にもよりますが、電力や空調、給排水、ボイラーなど多くの設備が備わっています。ビルが日々安全かつ快適であるためには、これらの設備を適切に維持管理していく必要があります。法定点検などの点検業務を行いながら異常や不具合がないかを確認し、必要に応じて修繕を行うことでビルのトラブルを未然に防ぎます。
法定点検とは、建物の安全性を確保するために法令によって義務付けられた最低限の定期点検のことです。「建築基準法」「電気事業法」「消防法」「省エネ法」「ビル衛生管理法」「水道法」「労働安全衛生法」「高圧ガス取締法」「浄化槽法」等の法令に基づいた各項目の点検を、例えば年に1回、年に3回といった定められた頻度で実施しなければなりません。これらの法定点検は罰則を伴っており、適正に行わないと、項目にもよりますが100万円以下の罰金などが課せられます。過去には防火設備が不十分なまま虚偽報告を行い、火災が発生して死傷者が出た事故で刑事罰を問われた事例もありました。このような甚大な事故が起きた場合、ビルの所有者や管理者の管理責任となります。安全・快適なビルを維持していくためには、適正な点検業務が不可欠と言えるでしょう。

警備・防災

ビル管理において、火災時などに施設内にいる人たちの安全を確保するために防災への備えは重要です。
先に述べた法定点検においては、下記のような点検を行います。

 

  • ・総合消防設備保守点検(消防法)1回/年
  • ・外機消防設備保守点検(消防法)1回/年
  • ・連結送水管耐圧試験 1回/3年
  • ・スプリンクラー設備保守点検(消防法)1回/年
  • ・排煙設備保守点検(法定)1回/年
  • ・防火対象物定期検査(法定)1回/年
  • ・消防訓練 2回/年

 

ビルの警備業務は機械警備などのセキュリティシステムと、人的警備からなります。機械警備の場合は建物にセンサーを設置し、火災や建物の侵入など異常を感知されると警備員が現場に駆けつけて対応します。近年は建物に常に警備員が常駐している警備形態は減少傾向にあり、遠隔で監視・制御を行う機械警備が普及してきています。
警備員による警備業務はビルの受付からシャッター等の施錠の点検といった巡回、事故発生時における避難誘導など多岐にわたります。警備業法による区分では1号警備に分類されます。

 

清掃・衛生

建物を利用する人にとって快適な環境を提供することは、テナントの入居率にも影響を与えることもあり、ビルの資産価値を維持するために重要な要素であると言えるでしょう。
清掃業務の内容は、一般的に日常清掃と、定期清掃、リニューアル工事や引き渡しの際に行う特別な清掃があります。作業員は清掃業務を行いながら、設備異常がないかなどにも気を配っての作業が求められます。作業には、床やトイレなどの水まわり、窓ガラス、外壁、給排気口などの清掃の他、産業廃棄物の処理などを含む場合があります。
「ビル衛生管理法」に基づく衛生管理業務は、建物内の空気環境測定や害虫駆除、飲料水の水質検査、給排水設備の清掃などを行います。

 

ビルメンテナンスについては、以下の記事でも詳しくご紹介しています。あわせてご覧ください。
ビルオーナー様必見|ビルメンテナンス仕事の種類や業務内容を詳しく解説

 

プロパティマネジメント

空室対策・テナント誘致業務

プロパティマネジメントは、オーナーに代わり不動産経営に関する維持管理など様々な業務を行うことで、資産価値の維持向上させていくサービスです。
その代表的な業務の一つである不動産業におけるテナント誘致業務とは、一般的には賃貸物件の借り手を見つけて成約させる仲介業務のことを言います。また特に商業ビルの賃貸物件についての仲介や、借り手がつくようにサポートを行う業務のことを指す場合もあります。
具体的な業務の内容は賃貸契約の仲介が主ですが、テナントの立地動向や周辺の賃料相場の調査といったマーケティングを実施する場合もあります。また、物件を建築する前に賃貸条件を検討したり、どのようなテナント構成にするのかといった調整・提案を行うこともあり、幅広い業務を含むと言えます。

テナント対応

テナント管理業務はオーナーに代わって入居者とのやりとりを行います。例えば店舗・オフィスの内装工事の立会いの場合、資材や設備の搬入時や工事の騒音などのトラブル対応にあたります。また、退去時の原状回復工事の協議や調整を行います。
その他騒音やゴミ出しのマナーなど入居者同士や近隣住民とのトラブル対応、設備の故障などのクレーム、要望の窓口となって対応します。
賃貸契約・更新・解約時の事務手続きや交渉も、管理会社が行うことで利害が一致しないテナントとオーナーの当事者同士の交渉よりも解決しやすくなります。
そしてビル賃貸業でよくあるトラブルとして、家賃の滞納が挙げられます。
家賃の滞納が発生しても入居者に即退去してもらえるわけではありません。電話などで催促し、それでも支払いがないようであれば内容証明で督促を行うことになります。さらに連帯保証人へ連絡、督促状の送付、それでも支払いがなければ弁護士を使って明け渡し訴訟へと進みます。裁判を経て強制退去となります。これらの対応を個人のオーナーが自分で行い解決するのは、弁護士との折衝や費用面でも非常に多くの困難を伴います。このような事態への対応ノウハウを持つ管理会社へ任せることは、大きなメリットと言えるでしょう。

 

アカウント管理業務(請求出納業務)

プロパティマネジメント業務のなかでも特に重要なのが、入居者、オーナー、関係各所への支払いや請求などの入出金の管理業務です。ビルの用途により異なりますが、例えば共同住宅以外のビルの場合、共用部分の電気・上下水道料金などを各テナントの使用料金を割り振り・算出し、各テナントに対し賃料・管理費等と併せて請求を行います。オーナーへはビルメンテナンス費用や消耗品、工事代など諸経費を月単位で算出し、管理委託費と併せて精算します。

原状回復工事

原状回復とは、退去の際に入居した時の状態に戻すことです。ただし賃貸住宅とオフィスビル、店舗ビルでは原状回復の借主による負担区分の範囲が異なります。

かねてより、賃貸住宅の退去時には原状回復をめぐる敷金の返金トラブルが後を絶ちませんでした。そこで平成16年(平成23年改定)に国土交通省により「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が発表され、原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義し、その費用は賃借人負担としました。そして、いわゆる経年変化、通常の使用による損耗等の修繕費用は、賃料に含まれるものとしました。
つまり原状回復は、賃借人が借りた当時の状態に戻すことではないことが明確化されました
 
オフィスの場合は住宅とは異なり、借主の負担が100%なのが一般的です。賃貸住宅の家賃には、通常の使用による消耗や経年劣化の補修に必要な費用が含まれているのに対し、オフィスの賃料には含まれていないことが多いです。それはオフィス使用の場合、使う人によって「通常の使い方」が大幅に異なるため、劣化の具合を予想して家賃に含むことが難しいためです。
店舗の場合も、基本的には借主負担で原状回復工事を行うケースが多いです。契約内容にもよりますが入居時の状態に戻す原状回復と、内装を解体して基本構造以外を全部撤去した状態にするスケルトン工事があります。スケルトン工事も原状回復工事の一つの形態と言え、基本的には借りたときの状態に戻すのが前提となります。よってスケルトン状態で貸した場合は、借主にスケルトン工事を求めることが多いようです。
また、飲食店でよくみられる、前の店舗の内装や設備などを活かす「居抜き」物件(前の入居者が内装造作の所有権を放棄し、次の入居者に譲渡された状態)の場合は、入居時の状態、すなわち補修が必要な箇所以外はクリーニング程度の場合もあります。
住宅、オフィス、店舗のいずれの場合も、契約時の特約によって負担内容が変わる可能性がありますので、借主、貸主双方が十分に契約内容を理解することが重要です。

バリューアップ工事

基本的に元あった状態に戻すのが原状回復なのに対し、バリューアップ工事は今ある建物に付加価値をつけて収益性を高めるリニューアル工事と言えるでしょう。収益性を高めるという広い意味では、工事ではありませんが空室を埋めるリーシングもバリューアップの一つと言えます。工事の内容についても、対象の建物によって様々なアプローチがあるので、具体的に「この改修を行うのがバリューアップ工事だ」と言えるものではありません。あくまで例としてあげると、「外壁やエントランスにデザイン性・機能性をプラスした改修」「リノベーション」「コンバージョン(用途変更)」「バリアフリー化」などがあります。通常の原状回復工事より手間と費用が多くかかるケースが大半ですので、費用対効果の見極めが必要になります。

ビル管理の資格について

ビル管理士とは

一般的に「ビル管理士」「ビル管」あるいは「ビル管理技術者」と呼ばれる国家資格は、「建築物環境衛生管理技術者」というのが正式名称です。
ビル管理士は「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」(建築物衛生法)に基づき、特定用途に利用される部分の面積が3,000㎡以上(学校等の場合は8,000㎡以上)の特定建築物を管理するため、必ず選任が必要とされています。ビル管理士は専門知識を有する資格者として、そのビルのオーナーやテナントには意見を述べる権限およびその意見の尊重義務が定められています。建築構造、設備、室内環境および衛生、給排水や清掃、廃棄物の処理といった、ビル管理に関する幅広い専門的知識が必要とされます。さらに基礎医学、生物学、化学などの知識が求められる他、管理費やクレーム対応といったマネジメント等、建物の事実上の最高責任者として管理業務を行います。具体的な業務内容は、維持管理業務の計画・立案・実施。また空気環境や水質などの測定・検査・評価。問題があればその改善案の立案・実施などが挙げられます。
ビルメンテナンス業界において働く場合、年収アップや転職に役立つ資格で、求人でも大変歓迎されています。

 

 

資格試験概要

例年10月上旬に試験の実施が予定されています。公益財団法人「日本建築衛生管理教育センター」により発表される合格基準を見ると、概ね7科目の合計65%以上、かつ各科目40%以上の正解率となっています。

 

試験科目

  • 1. 建築物衛生行政概論
  • 2. 建築物の環境衛生
  • 3. 空気環境の調整
  • 4. 建築物の構造概論
  • 5. 給水及び排水の管理
  • 6. 清掃
  • 7. ねずみ、昆虫等の防除

なお、科目合格制度はありません。

 

 

受験資格

ビル管理士の資格を取得するには、国家試験に合格する以外に「建築物環境衛生管理技術者講習会」を受ける方法もあります。ただし医師や一級建築士などを除くと、大学や短期大学などの指定の課程を卒業の上、学歴に応じて実務経験(1〜5年以上)が必要です。さらに10万円を超える費用や約3週間に及ぶ期間など、受講の条件を満たすハードルは高いと言えます。
一方、試験を受けるにも受験資格があります。厚生労働省令で定められた建築物の用途部分で、同省令の定める実務経験2年以上を満たすことが必要で、未経験の場合は試験を受けることができません。
実務に従事した建築物の用途
・映画館・劇場等の興行場、百貨店。集会場(公民館、結婚式場、市民ホール等)、図書館、博物館、美術館、ボウリング場等の遊技場
・店舗、事務所
・学校(研修所を含む)
・旅館、ホテル
・その他類する建築物(多数の者の使用、利用に供される用途でかつ衛生的環境も類似しているもの)

実務内容
・建築物の環境衛生上の維持管理に関する実務
「空気調和設備管理」「給水・給湯設備管理」「排水設備管理」「ボイラー設備管理」「電気設備管理(変電、配電等のみは除く)」「清掃、廃棄物処理」「ねずみ、昆虫等の防除」

 

ビル管理士については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。あわせてご覧ください。
ビル管理 キャリアアップに有利な資格とは|ビル管理士になる方法も詳しくご紹介

 

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