不動産情報コラム

コロナ禍での宿泊事業|現況と課題への様々な取り組み

作成者: 不動産有効活用・ビル開発|Jan 15, 2021 2:26:08 AM

C+ONE編集部:もともとは簡易宿所としてスタートした「COCOSHUKU」だと思いますが、「新宿花園」と「浅草蔵前」に関してはよりホテル寄りになっているかと思います。どういった転換があったのでしょうか?

K・K:これは新型コロナウィルス拡大以前の話ですが、20186月に旅館業法が改定になり、その改定後に民泊がすごく増えたんです。当時COCOSHUKUは民泊以上ホテル以下という位置づけで立ち上げたのですが、そういったマーケットには訴求しきれず、結果として民泊との価格競争に巻き込まれてしまいました。そこでCOCOSHUKUそのものを転換することにしたのです。設計、内装は「カモイケデザインラボ一級建築士事務所」の矢野さんご協力頂き、既存の3物件(中野、中野坂上、新宿Ⅱ)とは差別化を図っています。

C+ONE編集部:既存の3物件との違いに「客室文庫」といったコンセプトがありますが、これはどういったものなのでしょうか?
Y・A:矢野さんがCOCOSHUKUプロジェクトに参加した時にまず「COCOSHUKU」とはというところから入られた。矢野さん自身が国内外問わず旅行が好きな方なのですが、ご自身の体験で本を読んだり、そういうことも意外と楽しめるというところから発展してCOCOSHUKUでも採用したらどうだろう、という感じで始まりました。本もそれぞれの部屋のテーマにあわせて一冊ずつ選んでいます。

C+ONE編集部:「客室文庫」に関してお客様から何か感想はあったのでしょうか?

S・T:「自分の内側に窓がある部屋」という部屋があり「手紙の書き方」という本が置いてあるのですが「日本人の私が読んでも考え深かった」というご意見を頂きましたね。この部屋は窓がない部屋で、通常だとやっぱり窓がある部屋の方が自然光があったりとよいのですが、窓がないことで逆に静かに眠れたり、この方のように本をゆっくり読んで頂けたら嬉しいです。

C+ONE編集部:それぞれの部屋ごとに様々なテーマがあるのですね

S・T:こちらとしてはそこまで仰々しく説明しているわけではないのですが、お客様が自然にそう思ってくれたら嬉しいですね。

矢野さんのプランの面白いところなのですが必ず「人の絵」を入れるんですね。

客室文庫だったらここで読んでこう話すとか、キッチンにお母さんがこう立ったら子供とここで喋るとか。部屋の中心となる部分にキッチンを置きたいというのは、結構こだわりがあったみたいです。まさに人の「ライフスタイル」を部屋の設計や内装にどう取り入れるかはすごく考えていて、床の色や家具一つとっても適当に決めたものは何一つないです。

C+ONE編集部:こだわって作り上げた「新宿花園」や「浅草蔵前」ですが開業した途端、新型コロナウィルスの拡大となりました。現在の稼働状況はいかがでしょうか。

K・K:もともとはインバウンド観光客をターゲットにして立ち上げたため、今年(2020年)の3、4月に大幅に低迷しました。緊急事態宣言が解除されその後Withコロナな世の中になり若干の回復傾向は見えるものの、日本人の宿泊ニーズというものはどうしても週末や

休暇が同じタイミングとなり偏ってしまうため、なかなか連泊ニーズが拾えてこないという意味では稼働率は厳しい状態が続いています。

そうした背景もある中で、少しでも稼働率をあげるためマンスリーサービスを始めていて既存の3物件(中野、中野坂上、新宿Ⅱ)を中心に一定の成果が出始めています。

またマイクロツーリズムの需要も拾えてきており、いろいろ施設ごとに策を打っているところです。

C+ONE編集部:マイクロツーリズム(近場の旅行)ではどういった方にどのような使われ方をされているのでしょうか?

S・T:都内近郊の20代、30代の方を中心に女子会や男子会といった使われ方が顕著に多いです。

皆さんやっぱり自粛のストレスが溜まっていると思うので、それが居酒屋よりもホテルの限られた空間であれば知り合いのみだけで和気あいあいとできるのではと思っています。

都心にお住いのご家族の方のご利用もあったりと、みなさんリフレッシュというか気分転換に利用されているのではないかなと思います。

C+ONE編集部:マンスリープランはかなりお値打ち価格ですがこれはどういった使われ方をされているのですか?

S・T:マンスリーを始めるにあたって業者さんにヒアリングを行った結果、単身者の方がやはり8割~9割とのことだったので3ベッドあったのを思い切って1ベッドにし、机なども置きました。それによりマンスリーの需要が伸び現在既存の3物件は90%以上がマンスリーでの利用です。

中野や新宿とやはり都心に近くて利便性がいいので、通勤に時間がかかっていた方や中長期で出張されている方などが利用されているようですね。

C+ONE編集部:最後に今後の日本の観光業はどのようになるとお考えでしょうか?

K・K:いろいろな捉え方があると思いますが、観光業は日本としても国策のひとつとして捉えていると思うので、今後いずれ回復するものとして今後も客室数はさらに増やしていきたいと考えています。

 

S・T:オリンピックが実際あるかどうかは残念ながらまだ分からないのですが、ある場合にはインバウンドの方もまた戻ってくるはずだし、2021年はそういった意味で様々な変化に臨機応変に対応していかなければと考えています。

 

Y・A:COCOSHUKUに関しても今まではインバウンドの方向けだったのでシャワーブースのみだったのを、今後は国内需要も取り込むためバスタブがある部屋とシャワーのみの部屋両方作っています。様々な方や企業さんとコラボするといった企画も進めており、より広く展開していければと考えています。

この記事を書いた人

C+One 編集部 (北辰不動産株式会社)

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