投稿日:2021年07月16日 更新日:2024年01月15日

親世代から引き継いだテナントビル 「全てお任せ」…とはいかないリーシング事情

カテゴリ空室対策

  • 管理受託

親から世代交代し、初めてビル経営の窓口になられた子供世代のビルオーナー。いざリーシングを始めるときに管理会社に「全てお任せ」ではなかなか上手くいかないケースがあります。株式会社アドバンス・シティ・プランニングで店舗仲介を専門に行う「AZplus」の担当者に話を聞きました。アドバンス・シティ・プランニング


―空室に困っているビルオーナーさんからのご相談というのは、具体的にどのようなものなのでしょうか。

O:まず親がご自身のビルの上階に住んでいらして、自主管理をされてきたパターンがあります。これまでの何かあればテナントが直接(オーナー様が住んでいる)上に行って対応してもらうというような、良くも悪くも昭和な「大家さんと店子」といった時代ではなくなってきています。
世代交代でオーナーになられた方がいざ自分が窓口になってやっていこうとしたときに、何をどうしていいかわからないというケースが多いです。多くの場合子供たちは普段は別の場所に住みながら働いているので、会社を辞めてオーナー業に徹していこうとは考えてはいません。
空室募集に際して「飲食店なんていいと思うんですよね」とおっしゃる(世代交代した)オーナー様のお話を伺うと、ビルにダクトがついていなかったりすることも。意外とオーナー様自身がご自分のビルのスペックをよく理解してなくて、入れたいと思うテナントとビルがあっていないということがよくあります。

―オーナーが所有しているビルのことをよくわかっていないことがあるんですね。
O:すごく多いです。実際に都内の一等地といってもいい立地の店舗ビルの建て替えで、設計施工は他社が行い、管理はアドバンスという案件がありました。「飲食」ということになっているのに、図面を見るとダクトも看板もないんです。このままではテナントを埋めようがないという状態だったのですが、アドバンス社内の設計やビルメンテナンスの部署と連携して工事の手配を進め、後付けで工事を行いました。
設計会社さんにも結構得意不得意があって、大手でもマンションや自社ビルなどを主に手掛けているような会社が、店舗ビルも上手に設計できるとは限らないんです。このビルに関しても最初は「子メーター」がなかったんですよ。

―え、そうだったんですか。
O:そうなんです。子メーターがなくてどうやって検針するんですかっていう状態でした。

―依頼する側からすると大手の会社だったらなんとなく安心感があるのかなと思うのですが。
O:オーナー様側からすると、大手の会社にお任せしたから安心だろうということで、いろいろ説明を受けてもわからないままで進めてしまったようでした。それにもう一つもったいないなと思ったことがあって、このビルは道路の向かいにこのエリアのランドマークになっている施設がある立地なんですが、給湯室の小さな窓からしか見えないようになっているんです。賃貸ビルとして「高く貸せる」ような設計には残念ながらなっていないような印象を受けました。場所がすごくいいのに活かしきれていない物件だと思います。
大手だからといって、事業系のビルの設計施工を本当にわかっているとは限らないですね。
別の案件ですが企画段階で「現場から水道や電気のメーターは貸室内に置いたほうがいいって聞いたんですけど大丈夫ですか」と設計(他社)が言ってきたことがありました。それだと検針業務のときにいちいちテナントがいるときに中に入って行わないといけなくなるじゃないですか。そういうことをなんの疑問も持たずに質問してくる設計の方も実際にはいるんですよね。そもそもこの設計会社が最も得意としているのは住宅のデザインだっていうこともあり、事業系のビル特有のスペックについて知識がなかったようです。
例えばゴミは住宅も含めて一番問題になりやすいことですが、特に賃貸ビルでは「きちんとスペースを確保してやるべきことをやっています」という姿勢がすごく重要なんだと思います。
設計だけではなく、ビルオーナー様も「なんでもテナント側がやればいい」と思っている方が多いような気がします。

―ビルを建てることが目的ならそれでいいのかもしれませんけどAZplus担当者
O:そうです。スペックの「ベースを整えておく」意識がないオーナー様が結構多いのかなという印象がありますね。看板にしても窓からの景色にしても借りる側の気持ちになるのが大事です。極端な話、自宅だったらどんな建物でもいいかもしれません。でも賃貸ビルには人に貸して賃料をもらうという意識が必要だと思います。
例えばオフィスビルのトイレでも、男性用が水色、女性用がピンク色というのがごく普通でしたけれど、ちょっと今の感覚からすると古くさいというか。オーナー様からすれば「ちゃんとトイレがあるんだしこのままでいいじゃない」と思うかもしれませんが、借りる側の気持ちになればもうちょっと違う対応になるのではないかなと思います。やっぱりこのコロナ禍にあって、そういったことに柔軟に対応できているビルは空室になっても解約予告期間中にすぐに次のテナントが決まっていますね。

―そういったスペックなどの他に空室対策としてできることはどんなことですか
O:諸条件の見直しでしょうね。先手必勝が大事なんだと思います。
例えば「今原宿で借りる人もなかなかいないので1年限定でキャンペーンしませんか」とかそういう提案をいち早くしている管理会社さんのところは決まっているようです。最終的にやるかやらないかはオーナー様の判断ですが、そういう提案をしないと1年とかそれ以上平気で空いたままになってしまいます。ただオーナー様が「あの時は特に何もしなくても貸せたのに」という意識だとなかなか現状をご理解いただくのも難しいです。
また設備の進化がすごく早いので、適切なリニューアルなどの対応ができるかどうかも重要ですね。コロナ禍になって蛇口もひねるタイプだと古さが目立ちますし、エアコンだって長く借りていただいていればいつかは絶対に壊れます。オーナー様に現状をきちんと報告して、リニューアルの決断ができるようにわかっていただくことが大事ですね。

―判断しなければならない局面ではやはり管理会社とオーナー様とのコミュニケーションが重要になってきますね。
O:管理会社はPMがオーナー様との窓口になっているパターンが多いのですが、アドバンスの場合、PMとBMがはじめから二人体制で担当します。仮に建物に不具合があって損害が発生した場合、PMだけでも、またBMだけでも対応しきれません。社内で情報を共有するのはもちろんですが、テナント側をPMが、建物を直すのはBMがといったようにそれぞれ対応にあたります。緊急のトラブルについてもより迅速に対応できるのが強みです。PM・BM・設計などの部署が同じ社内にはあっても、必ずしも横の連携が密接に取れているとは限らない管理体制の会社もあります。その点アドバンスでは、社内で各部署が連携しつつ小回りがきく管理体制がオーナー様から支持されているのかなと思います。

この記事の監修

AZplus
(株) アドバンス・シティ・プランニング 企画リーシング部

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