投稿日:2020年05月01日

家賃を下げずに空室を埋める|原因追及により効果的な空室対策を

カテゴリ空室対策

一棟アパートや一棟マンションの賃貸経営をされているオーナーにとっての悩みの一つが空室ではないでしょうか。

空室を解決するためには、家賃を下げるのがよいのでしょうか。

結論から申し上げますと、家賃の値下げは最後の手段にした方がいいケースが多いです。

「多い」と言うのは、そうではない例外もある訳で、例えば、今の新型コロナウイルス問題で市場環境が激変したときのような平時とは異なる例外的な状況もあるということで、この点は、最後の「家賃を下げるという選択肢が必要な場合」をご参照下さい。

まずは、こうした例外の前に、平時における、空室に対してできる本来のやるべき対策について、ご紹介してまいります。

空室対策イメージ

家賃を安易に下げてはダメな理由

賃貸管理会社から長期に渡る空室に対して家賃減額の提案があったとしても、その管理会社の担当者がどこまで真摯に空室対策の検討を行い、適正賃料相場を把握する努力を行った上での提案なのかを見極めない限りは、提案されるがまま家賃の減額を行ってはいけません。

なぜならば賃料こそが賃貸経営の収益の源であるからです。

ご存知の通り、表面利回りの計算は下記の計算方法で算出されます。

 

表面利回り=(年間家賃収入÷物件価格)×100

 

家賃を下げることは収益の低下(=もし売却する場合は、売却価格の低下)に直でつながってしまうのです。

また今の日本の家賃には「継続賃料」という概念があり、無条件で安易に下げてしまうと、この「継続賃料」の考え方がネックとなって簡単には上げることができなくなりります。

この「継続賃料」という壁があるため、裁判に訴えたとしても鑑定評価で周辺相場の値上がり等を証明しないと賃料値上げは容易には認められない、という大家側に不利なケースが多いのが実態なのです。

安定した長期的な収益を得るためには、家賃の減額による空室対策を考える前にもっと他にやれることがないのかを十分に検討し、高すぎず安すぎず、という自分の物件の的確な相場賃料を常に把握し、賃料が高いから決まらないことが最大の要因だとわかるまでは安易に賃料値下げは行わないという姿勢が重要です。

(但し、今のように新型コロナウイルスによる営業自粛でテナントさんから賃料値下げ要請がどんどん来てしまう、という異例な状況については最後の「家賃を下げるという選択肢が必要な場合」の項目をご参考にしてください。)

それでは、どういった空室対策が有効なのでしょうか。

まずは原因を追究

空室が続いたからといってインターネットや参考書に載っている方法をやみくもに試すのは賢明とは言えません。費用を有効に使うためにも、まずは原因を追究することが大切です。

 

空室が続いた場合、考えられる原因としては下記のようなものがあげられます。

 

問題1:広告宣伝に問題があり物件の魅力が伝わっていない

問題2:家賃相場に対して物件の質が落ちている

問題3:周辺環境の変化(競合物件など供給過多や入居者の変化)

問題4:募集のやり方や条件に問題がある

問題5:時期

 

どういった問題が起きているか把握するためには、管理会社に状況を聞くだけではなく、直接現地に行ってみることがおすすめです。

物件の状態を自分の目で確かめたり、周辺環境を歩いてみたり、入居者の人に直接ヒアリングをしてみたり、退去された方にアンケートをして生の声を聞いてみるのもよいでしょう。

またインターネットなどを利用して、入居者ニーズの情報をチェックすることも大切です。

 

それではそれぞれの問題に関しての対策を見ていきましょう。

空室対策

問題1:広告宣伝に問題があり物件の魅力が伝わっていない

通称マイソクと言われる物件の募集チラシはどうなっているでしょうか。

白黒で物件の見た目が伝わりにくかったり、いかにも安っぽいスーパーのチラシのように出来上がっていないでしょうか。マイソクはそれ自身が広告の役目を果たします。

キャッチコピーをつけたり、きちんとデザインをすることで、ほかの物件と差別化を図ることが可能です。

 

「マイソク」については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。あわせてご覧ください。
マイソク(不動産チラシ)こそ空室対策の一丁目一番地

 

物件の写真も大切です。

築浅の物件なのに、写真が暗くまるで築古の物件のように写っていないでしょうか。

撮り方や加工により、広く明るく見えるように心がけましょう。

 

また募集をお願いする仲介会社にも、写真やマイソクのデータを渡し、広告の質を保つことを徹底しましょう。

 

家具や小物を置いて、空室を居住空間に演出する「ホームステージング」による方法も有効です。実際に家具や小物を用意しなくてもVRによる「バーチャルホームステージング」という方法もあります。

 

最近の「賃貸契約者動向調査」によると不動産会社店舗への訪問数、物件見学数ともに減少傾向にあるようです。つまりインターネット等の情報によって物件を決めている人が増えているのです。

そのためマイソクや写真、ホームステージングという方法で、物件の魅力を最大限に引き出して広告を行うことは空室改善に役立つと言えるでしょう。

問題2:家賃相場に対して物件の質が落ちている

家賃に対して物件の質は見合っているでしょうか。

特に築30年を超えたような築古の物件であれば、お金はかかりますがリフォームやリノベーションは効果的です。例えば和室を洋室に変更したり、3点ユニットをバス・トイレ別するなど。洗面所や浴室、トイレ、キッチンといった水廻りは入居者が気にするところなので、きれいにするのがおすすめです。外壁や共用部分といった部分も古さや汚れが目立つようであればリノベーションなどを行い物件そのもののグレードをあげるのが良いでしょう。

但し、リフォームやリノベーションには程度に応じて相応の改修費がかかりますので、費用対効果の見極めが重要です。場合によっては、最後に述べる「賃料の値下げ」こそが最善手ということもあります。何もしなければ経年劣化により、築年とともに賃料が下がっていくのは必然ですが、ハード面の劣化以外にも、社会的ニーズの変化に合っていない「陳腐化」というケースもあります。
例えば、事務所であれば、女性の社会進出の拡大で、比較的狭いオフィスであっても男女別トイレが喜ばれる時代になっている、といった変化です。ビルの設計そのものが、そもそも、リノベーションでもトイレを2つに増やす工事が無理なケースも少なくはないと思います。

このように、躯体や設備の経年劣化や陳腐化という原因がはっきりすれば、期待していた想定賃料が高すぎた、ということであり、ハード的にこれらを改善しない、できない、のであれば、思い切って賃料を値下げするしかありません。それがその物件の本来の相場だということです。

 

しかし、一方で、上記のような室内仕様に特に問題がない場合は、設備を見直してみてください。

「モニター付きインターホン」や「オートロック」「ディンプルキー」といったセキュリティ設備、「エアコン」や「宅配ボックス」や「Wi-fi」などは入居者ニーズの高い設備です。

「エアコン」などは最近では標準装備が当たり前ですし、同じような物件があった場合、設備一つによる違いで入居者に差が出てしまうこともあるでしょう。あるいは、同じエアコンでも最近のようにIot対応で外出先からスマホでリモート操作可能なエアコン等も発売されていますので、部屋全体がIot対応マンションでなくとも、一番喜ばれそうな機器のみITに対応させるだけでも喜ばれるかもしれません。
また、「宅配ボックス」も、ビル建築時に設置していないとできないと誤解されているかもしれませんが、最近では後付けで設置可能なタイプも開発されていますので、後付けタイプの設置場所があれば改修工事なしで設置できるかもしれません。

このように、設備の中には、後から比較的安価で設置できるものもあるため、ニーズを見極めながら、効果的に取り入れていきたいところです。多額の改修費をかけたリフォームやリノベーションまで行わずとも、少額の設備改修だけでも時代のニーズにマッチさせることができれば、賃料を大幅に下げずとも費用対効果の高い空室対策になるケースもあるのです。

問題3:周辺環境の変化(競合物件など供給過多や入居者の変化)

以前は満室が確保できていたのに、最近は稼働率が落ちているといった場合は、周辺環境の変化についても調査してみましょう。

 

一つには競合物件の増加による供給過多が起きている可能性があります。

そういった場合は、「差別化」を行うことで効果がある場合があります。

先にあげたような設備による差別化もありますし、壁の一部をアクセントクロスにしたり、床の雰囲気を変えるなどデザイン面で差別化を行う方法もあります。

 

エントランス部分に花を飾ったり、入居時にはちょっとしたプレゼントを用意するオーナーさんもいるようです。

何が正解ということはありませんが、ポイントとしては「どうしたら入居者の人が喜んでくれるだろう」といった入居者目線で考えると、他とは違った魅力の物件になるかもしれません。

 

周辺環境の変化として他に考えられるのは、大学や会社等の移転です。

今まで学生が多かった地域で大学が移転をしてしまったら、ターゲット層の見直しを検討しなくてはなりません。

思い切ってターゲットを絞り、コンセプトやテーマをもつことで差別化を図れる場合もあります。

「女性専用」「外国人専用」「高齢者専用」など。

例えば外国人向けの賃貸物件であれば、ムスリム(イスラム教徒)の方は、15回の礼拝の義務があり、お祈り用の部屋が必要です。しかし、日本でこういったニーズに適した物件を見つけるのはなかなか難しいので、そういう外国人が集まるような地域にある場合は、敢えてそうした特殊な部屋のある物件作りをしてしまう、といった事例です。

上記は一例ですが、このように差別化を行うことで、他にはない価値のある物件を目指すことも可能です。

一方で、こうしたターゲット層絞り込み戦略は、先ほどの特定外国人層に向けた物件であれば、国際的な政治要因に左右されるといった覚悟も必要になります。

そういう意味でも、不動産賃貸業というものは、事業環境の将来まで予測するという経営センスを問われる事業でもあるのです。

問題4:募集のやり方や条件に問題がある

リーシングを管理会社に任せている場合、その管理会社との関係はとても大切です。

やはり担当者も人なので、好感をもてる相手に対しては、頑張って空室を埋めようという意識が働きます。

管理の業務を丸投げするのではなく、管理会社とコミュニケーションをとりながら、自分事として賃貸経営に向き合う姿勢を見せるとよいでしょう。

 

それでも尚、管理会社が仲介(媒介)に熱心でなく、単なる家賃引き下げしか提案してこないようであれば、管理会社の体制そのものに問題がある可能性もあります。

そうした場合、管理会社を変更するだけで、驚くほど早く空室が解消されたというケースもあります。

もし他の管理会社に依頼しようとする場合は、その管理会社との契約が「専任媒介契約」なのか「一般媒介契約」なのかについても注意が必要です。

 

「管理会社の変更」については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。あわせてご覧ください。
管理会社を変更するには。手順や注意点を徹底解説

 

募集の条件を緩和するという方法もあります。

「ペット飼育可」「楽器可」「SOHO可」「クレジット払い可」などです。

「保証人不要」といった方法もありますが、これはリスクも伴いますので管理会社に相談するのがよいでしょう。

問題5:時期

賃貸住宅は時期による影響も大きくあります。

進学や就職、転勤などで1月~3月頃は1年の中で一番入退出の多いオンシーズンと言えますが、4月中旬になっても空室が埋まらなかった場合は、動きがなく埋まりづらくなることも事実です。

こういった時期による問題の場合は、家賃ではなく一時金の減額による対策が有効な場合もあります。

たとえば入居後の数か月家賃を無料にする「フリーレント」を設定したり、「敷金」や「礼金」「更新料」を無料にするなどです。

 

こういった一時金免除によるキャンペーンを行うことで、賃貸募集のポータルサイトでの露出を狙うことができるでしょう。

家賃を下げるという選択肢が必要な場合

最初に「家賃を下げるのは最後の手段にした方がいい」とお伝えしましたが、それは「家賃以外に決まらない理由がない(家賃が高すぎて決まらない)」という結論を早く導き出すためにも、今回あげたような空室の問題点をすべて早めに把握して、それを出来る限り解消することが大切だからです。
競合物件に対して解消困難な弱点があるのに賃料が高いのではないかも、そこで見えてきますので適正賃料を見極める上でも強み弱みの把握は、早期かつ、募集前に必要です。

そして今回あげたような対策で手を尽くしても決まらない時には、「賃料が高すぎた」訳なので、どのくらい下げれば良いかのリサーチを早急に行い、そこまでは思い切って家賃を下げる」事が必要です。
業界でよく言われる言葉が「相場には勝てない」です。しかし、実はこの賃料相場、というのが一筋縄ではいかないのが不動産です。ある程度の明確な相場がある分譲賃貸マンションのような市場もありますが、一棟ビルの店舗や事務所のように条件が千差万別だと適正賃料相場がいくらなのかを把握するのも容易ではありません。
賃料は「安易に」下げてはならない、という「安易に」の言葉の裏には、「適正賃料がいくらなのかもわからずに」という意味を込めているのです。逆に言えば、「相場には勝てない」のですから、賃料が高すぎたことがわかれば、思い切ってスピーディに「適正な相場賃料まで」下げなければ空室は埋まらないのです。
 
また、今のように新型コロナウイルス問題で相場環境が激変しているような事態では、上記で書いたような平時の考え方は通用しませんので、状況に応じて相場が回復するまではタイムリーな値下げや条件緩和も必要になります。
長期にわたる不動産賃貸事業というものは、こういった不測の事態にも遭遇しますので、その都度、状況と先行きを見通して適切な対応を行うことが大切です。
 
なお、リノベーションのように明らかに物件のハード面の質的改善を行ったことがわかりやすいようなケースを除くと、一度下げた賃料を引き上げるのはとても難しくなりますので、値下げの際には様々な条件をつける等の工夫も必要で、そうした契約内容をきちんと変更契約書面にしておくことが、後々に重要になってきます。
こうしたやり方がよくわからないという場合や、先ほどの「適正な賃料」を設定するための市場調査をしたいといったビルオーナー様には、お気軽にご相談いただける無料の会員制度がございますので、こちらからご相談下さい。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

空室対策には管理会社による一括借り上げによる方法ももちろんありますが、管理委託よりももちろん費用はかかります。

まずは現状をきちんと把握し、対応できる空室対策がないか検討してみることから始めるのもよいでしょう。

この記事を書いた人

C+One 編集部

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