投稿日:2019年04月11日

設計事務所に3種類あるってご存知でしたか?~アトリエ系、組織系、そしてもう一つは?

カテゴリ設計

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1.一級建築士事務所の看板を掲げる会社には異なる性格の設計会社がある

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一級建築士事務所の看板を掲げる「設計事務所」はたくさんありますが、大きく分けると異なる性格の2種類の設計事務所があるのをご存知でしょうか?

一級建築士事務所については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。あわせてご覧ください。
一級建築士事務所とは?そのほかの建築士事務所とは何が違うの?

その2つというのが業界専門用語でいうところの「アトリエ系設計事務所」と「組織系設計事務所」です。もちろん、この2つ以外にも工務店や工事会社の設計部門等も含めて設計事務所のタイプはもう少しありますが、業界的に大まかにわけた場合は、このアトリエ系と組織系というのが2大分類とされています。

(3つあるというタイトルの理由は、最後にご説明します。)

 

2.アトリエ系設計事務所と組織系設計事務所はどんな違いがあるのか?

そもそも、「アトリエ系建築設計事務所」というのはいつから誰が言い始めたのか、由来を調べてみるとこのように説明されていました。

 

「個人の建築家が主宰する建築設計事務所のうち、特に建築家個人の作家性を強く反映した設計を行う設計事務所に対する通称である。組織系建築設計事務所としばしば比較される。アトリエ系という呼称は、建築家磯崎新が自身の設計事務所の設立に際して「磯崎新アトリエ」と名付けたのがそもそもの始まりである。これは当時主流であった「建築設計事務所」という呼称に抵抗を感じ、芸術家のアトリエのような個人の製作場所を指向したのが理由とされる。次第に追随する設計事務所が出始めたため、この呼称が広く定着していった。 」(wikipediaより引用)

 

なんと、この度、建築家のノーベル賞とまで言われれるプリツカー賞を受賞された、あの磯崎新(いそざきあらた)先生が由来だったんですね。

 

column_arc_02目指すのはアート、芸術?

 

 

では、一方の組織系の建築設計事務所はどうでしょうか?

 

「組織系建築設計事務所は、設計専業で特に規模の大きな建築設計事務所に対する通称である。アトリエ系建築設計事務所としばしば比較される。一つの建築設計事務所で、意匠・建築構造・建築設備・エンジニアリングシステムなどを計画・設計することが可能であり、さらに建築工事現場における監理もできるという特徴を持つ。(中略)その反面、アトリエ系事務所に比べると、経済効率や信頼性が優先される傾向にあるため、実験的なデザイン等を自由に行うことが少ない。しかしながらデザイン性に劣るというわけではなく、堅実なデザインを得意とするという側面が強いといえる。なお組織系事務所出身のアトリエ系建築家も少なくない。」(wikipediaより引用)

 

これに厳密に従うと、結構な規模の専業の大手設計事務所でないと「組織系」とまでは呼べないということになってしまいますが、業界的にはそこまで厳密にこだわって使われるケースは少なくて、アトリエ系に多い個人事務所的な規模より大きい中小の設計会社であれば、ざっくりと「あそこはアトリエ系じゃなくて組織系だよね」的な感じで使われていると思います。

 

ただ、その場合でも意識して使われているのは、企業の規模よりも「オリジナルなデザイン、意匠」を重視しているっぽい事務所かどうかという、設計事務所のポリシー、フィロソィー的な分類のされ方が中心です。

 

3.アトリエ系建築設計事務所はなぜアトリエ系なの?

アトリエ系建築設計事務所は、やはり個人事務所的な規模の設計事務所が多い訳ですが、なぜ「アトリエ系」の特徴である「意匠、デザイン」に特にこだわるのでしょうか?

 

アトリエ系設計事務所に入る設計士の最終目標は「有名建築家」となって先生になること、という夢があるから、というのもあるかもしれませんが、もうひとつは、「受注競争に打ち勝って食べていくため!」という切実な理由もあったりします。

個人設計事務所って、実はじっとしていれば設計の仕事がどんどん舞い込んでくるような甘い商売ではありません。有名な先生の事務所は別として、多くの無名のアトリエ系の個人事務所の規模では、やはり組織系と違って最初からビルやマンションをドンドン受注できるという訳ではなく、絶対的な建築ボリュームがある個人の注文住宅等の設計をいかに受注するか、といった競争があります。

 

その競争に勝つための一番の武器が「デザイン、意匠」なのです。結局は、法規に沿ってやるべきことをきちんとやる、という設計の基本部分では、専門知識のない一般個人の施主に対して他の設計事務所と差別化して主張できる部分が殆どなく、最後は、「いかに施主好みのデザインをプレゼンするか」で受注が決まるケースが多いからです。

その証拠に「一級建築士事務所」の公式サイトの殆どが、いかにデザインセンスの良さをアピールするか、いかに過去の設計実績の建築のデザインの良さをアピールできるか、に腐心していることからもわかるでしょう。

 

4.組織系設計事務所は個人住宅市場には消極的?

アトリエ系個人設計事務所の主戦場である個人住宅市場に組織系設計事務所が大挙して営業しにくると、それでなくとも大手ハウスメーカーとの競争もある中で個人事務所は大変なことになりそうですが・・・実は組織系設計事務所って個人住宅とかの受注には消極的だったりします。

 

なぜかというと、まずは、組織系設計事務所は特に自分たちが営業せずとも、大きな設計案件が舞い込んできて忙しいというのがあります。

そしてもう一つは、組織系設計事務所からすれば「施主の好みを聞いて建てる個人の注文住宅は儲けの割に面倒な仕事」という位置づけだからです。

組織系では分業された業務の中で型にはまった業務を着実にかつ、たくさんこなしていくという性質の仕事が多い一方、個人住宅ともなると、実は「クレーム商売」と言われるほど、施主のデザイン的な好みや希望を聞きながら設計していくという手間と時間がかかります。

特に、個人の好みに合わせたデザイン、意匠を考えて施主の納得するものを建てる、というのは施主自身も明確な答えを最初から持っている訳ではありませんから、なかなか大変な仕事です。

つまり、他にも設計の仕事がたくさんあるような組織系設計事務所が敢えて個人住宅の設計市場に乗り込んで受注競争をしたい理由がないのです。

 

column_arc_01希望の色を探すのは大変です・・・

 

 

5.中小規模の賃貸テナントビル設計はどこに依頼すればいいか?

さて、ここからが問題ですが、個人や中小企業が保有するような中小規模の賃貸ビルは、どこに設計を依頼するのがいいのでしょうか?とにかく予算はいくらでもあるので、デザインに徹底的に凝った賃貸ビルを建てたい、ということなら、有名な先生のいる著名なアトリエ系建築設計事務所にお願いするのがいいでしょう。

 

しかし、賃貸ビルを建築する場合、多くのビルオーナー様にとって最も大事なことは、やはり長期に安定稼働するかどうか、また資産運用として高い収益性のある収益物件にできるかどうか、という投資家的な立場での設計が重要なはずです。

 

そこで問題なのが、有名な先生に高い設計料を払いたくないけれど、そこそこデザインにこだわったお洒落なビルを建てたい、だから、気に入った実績写真が掲載されているアトリエ系の個人設計事務所に依頼したい、というケースです。

先ほども述べたように、多くのアトリエ系設計事務所は意匠、デザインで差別化して受注競争に打ち勝つ必要があるので、個性的で美しいデザインの住宅は設計できるはずですが、事業収支が大事な賃貸ビルの設計の経験が豊富とは限らず、そのような設計をするとメンテナンスが大変だとか、長年の間に問題が起きるとか、その立地で、そういう個性的デザインではターゲット顧客層を狭めすぎてしまうとか、そうした賃貸ビルに必要な設計ノウハウに明るくないといった設計事務所かもしれないのです。

 

意匠にこだわる設計事務所に依頼すると、デザインが目立たないと次につながらないからと必要以上に凝ったデザインにするケースもありますが、施主としてもその個性的なデザインに目がくらんで依頼した結果、建築コストが膨らんだ割にテナント側から見ると使いづらい建物になっていて、かけたコストに見合った賃料を取れないビルになる、といったケースもあります。もちろん、建築の面白さはこうしたこだわりのデザインの建物を建てる、というところにもあるので、それを納得の上で建てるなら全然問題はありません。

 

しかし、「デザインにもこだわりはあるが事業収支は大事」というビルオーナー様であれば、やはり、見た目のデザインと事業収支の両面から納得できる提案ができる設計事務所を選ぶことが大事です。

 

6.「組織系設計事務所」だからこそデザインのクオリティは重要

アトリエ系事務所ではその事務所の代表者のデザインセンスで勝負するため、これは建築物に限らず、だんだんと、誰が設計したかがわかるような、その設計者、先生のカラー、テイストを売りにするような方向性に絞っていく傾向があります。
そのために、自分の「意匠スタイル」をなるべく崩さないようになっていくために、敢えて、柔軟な「商業デザイン」から、少し「アート」寄りなデザインをする傾向があり、特定のファンには、凄く刺さるビジュアルデザインだとしても、賃貸ビルとしては貸しづらかったり、建築費用が高くついたり、管理費用面で不利だったり、という個性的なデザインになってしまうケースもある訳です。

最近の誰でも知っている一番わかりやすい事例で言えば、当初の国立競技場の「ザハ・ハディッド」の宇宙船のようなデザインです。個人的には、未来感のある造形で嫌いではありませんでしたが、建築コスト等の問題で没になってしまいましたね。
もちろん現在の隈研吾さんも、木や森の自然を感じさせるというスタイルで採用された、世界的な巨匠なので、アトリエ系の先生な訳ですが、このように美術館や競技場のような公共建築物は、まさに個性的なビジュアルが重要なため、アトリエ系の先生方が独壇場となるような建築物の一つです。
梓設計さんのような大手組織系事務所と組んでいる、という点では、ハイブリッドなチームで設計しているとも言えますが。

では、組織系の設計事務所のビジュアルデザインは、アトリエ系よりも、センスが悪くてデザインクオリティの低い設計でもいいのでしょうか?

金太郎飴のような普通の建物をベルトコンベヤ式でたくさん作るのだから、建物の見栄えなんてどうでもいい、法律に沿った内容で、容積率を可能な限り消化することが何よりも大事なので、見栄えなんて、まあまあ良ければ十分、ということでいいのでしょうか?

私は、建築物の空間の見栄え=ビジュアルデザイン、というものは、実は人間が心地よく過ごすための重要な「機能」の一つだと考えます。人間を、360度真っ赤な色で塗った部屋に何日も閉じ込めるテストをするとストレスで精神が病む、という話もあるくらい(このようなテストは都市伝説のような話で真実ではないようですが)人間にとって、建築物や室内空間のデザインというものは重要なはずです。
つまり、誰かの個人的な好みではない、多くの不特定多数の人に向けた賃貸ビルのような普通の建物にこそ、多くの人が心地よさを感じる「普通よりちょっとおしゃれ感」のあるデザインであるべきだったり、商業ビルであれば、あまりに個性的でないまでも、通りの中で目を惹くデザインが必要だったりする訳ですから、「組織系設計事務所」だからデザインセンスは悪くてもいい、なんてことには絶対にならない訳です。
むしろ、そのような多くの建物を量産する「組織系設計事務所」は、アトリエ系のような個性的なデザインで勝負できないからこそ、シンプルで洗練されたハイクオリティなデザインを限られた予算の中で創り出すという、高度なデザインセンスを必要とするのが本来の姿だと思います。
組織系の設計事務所だから見栄えにはこだわらない、適当でいい、デザインセンスなんて必要ない、等と誤解している設計士がもしいるとすれば、ロクな建物は設計できないと思った方がいいのではないでしょうか?
そういう人が設計したものは、先ほどの「まあまあ良ければ十分」、というのが結局は「ダサい」感じになるのが目に見えています。

「ミース・ファン・デル・ローエ」の言葉としても有名な「神は細部に宿る」という意味を理解していない設計士がいるとすれば、組織系であれ、アトリエ系であれ、いつまでたっても、一流の設計士さんにはなれないでしょう。

 

7.「アトリエ系設計事務所」でもなく「組織系設計事務所」でもない「ハイブリッド系」

設計事務所は「アトリエ系と組織系の2つ」と言ってたのに、そんな設計事務所ってあるのでしょうか?

つまり、「アトリエ系と組織系のいいところを両方持った設計会社」がいい、ということで、正式な業界用語ではありませんが、私が独自に「ハイブリッド系」と名付けてみました。

そういう訳で、「ハイブリッド系設計事務所」とかでネット検索してみても、意味も事務所も出てはきませんが、「賃貸ビル」で大事なのは、そういう、長期的な事業収支、メンテナンスも考えた「機能美」を追求する「ハイブリッドな設計の考え方」だということです。

それができる賃貸ビルの設計ノウハウを持っていて、なおかつ「ハイセンス」な「機能美」デザインも得意な設計事務所、それがタイトルに書いた「3種類の設計事務所」の最後の3つ目、それが「アトリエ系と組織系のいいところを両方持った」、言うなれば「ハイブリッド系設計事務所」です。
先ほどは、「組織系設計事務所」はアトリエ系と違って、個性的すぎないデザインでも勝負できるだけの洗練されたデザインセンスが必要と書きましたので、そういう意味では「ハイブリッド」という言葉は必要はないのですが、ここはわかりやすく、敢えて「ハイブリッド系設計事務所」という造語を作ってみた次第です。

 

ここからは私たちの広告です~「ハイブリッド」なデザイナーズ・リノベーション事例~

私は設計士ではありませんが、グループ内の設計事務所と共同で、下記の賃貸中古ビルのリノベーションのデザインディレクションを行いましたので、ご紹介しておきます。リーシングのマーケティング、事業収支も全て考慮して、リノベーションデザインを検討し実施した事例です。ハイブリッドなリノベーションを目指しました。

どこまで「ハイブリッド」に迫れたかわかりませんが、無事にこの立地では本来難しい狙った業種のIT系のテナントさんが入居されてカッコいいオフィスにして頂き、大変喜んで頂けました。

 

デザイナーズオフィスのテイストで「攻める」けれども「攻めすぎない」というバランス感覚を大事にしてディレクションしましたが、それほど古くない中古オフィスで、原状回復ではなく、そこそこ費用をかけてリノベーションする、というのは少々やり過ぎ感もある中で、バランスを一歩間違えると「中途半端なデザイナーズ」という、一般の人にもデザイナーズ好きな人にも両方に嫌われるという結構なリスクがあります。

 

これは「ビルのブランディング」という独自マーケティング戦略に基づく一連のビル一棟全体のバリューアップという大きな施策の仕上げとして、かなりの覚悟をもって行った事例で、最終的に満室稼働で再販成功しなければ、リノベ費用は単なる過大投資になりかねないというリスクテイクが必要でした。

一般ビルオーナー様には、そういう覚悟と資金的な余裕に加えて、マーケティングセンスとデザインセンスあるスタッフが見つからない限りは、お勧めしようとも思いませんので、あまりいい事例ではないのですが、「ビルのブランディング」を行えるような中古ビルの仕入れもなかなか難しく、私たちとしても対象物件が限られ次から次へと量産できる訳ではありませんので、「マーケティング戦略に基づく事業収支とビジュアルデザインを適度にバランスさせたリノベーションのハイブリッドなデザイン設計」の成功実例としてご紹介しておきます。

 

同業他社の方にこのような「ビルのブランディング」という独自のバリューアップ実例を簡単にネットで公開して大丈夫?と思われるかもしれませんが、表面をなぞるだけでは簡単には真似できないノウハウの本質はネットには公開していません。ご興味あるビルオーナー様はお問い合わせ下さい。


(by C+ONE編集長 兼 HRESマーケティング&デザインディレクター K.Fujii)

 

<アドバンス・シティ・プランニングの内装設計と工事監理によるオフィス・リノベーション事例>

      リノベーション後のテナント入居事例

 

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ネット公開を入居テナント様のご了解を得て、引っ越し直後を撮影させて頂いたので少しまだ片付いていませんが、雰囲気をお伝えできればと思います。

普通のオフィス内装とは明らかに違いますが、かといって見たこともないような個性的なデザインでもなく、どこかで見たことのある既視感がある「デザイナーズテイスト」で、テナント様がここからクリエイティブに工夫して遊んでいただけるような余地を残した感じのデザインが賃貸物件では大事なバランス感覚だと思っています。

このテナント様はリノベーションしたフロアを廊下、会議室、社長室とかに区切って、廊下側に新たに壁を作った箇所に壁向きにデスクを置くといった、上手い配置をされていてさすがIT系さん、こちらが想定した使い方より上手に工夫されていて「カッコよく、かつ便利に」使われていて、とても感心しました。

 

ビル特設ページ  

 

55年以上のビル賃貸事業の実績がある北辰不動産と、そのグループ会社で35年以上の設計実績、東京、首都圏で300棟以上のビル管理受託実績がある「アドバンスシティプランニング」。

「ハイブリッド系設計事務所」というのは、口で言うほど簡単ではありません。私たちも、ハイブリッド系設計事務所の道を究めるには、まだまだ研究と研鑽が必要だと考えていますが、そこに近づくための経験とノウハウの蓄積は十分にあると自負しています。


北辰不動産が、自らが長年、多様な賃貸ビルを保有してきたからこそわかるノウハウ、多数のビル管理をしているからこそわかる賃貸ビルに必要な設計、そういうトータルなグループ各社のノウハウを、ワンストップでビルオーナー様にご提供するための会員制度「COCO ASSET」も運営しています。

設計だけでなく、ビル管理等に関しても、何かお困りごとがあれば、ハイセンスな機能美を追求する「ハイブリッド」な設計事務所を目指す「北辰不動産グループ」の一級建築士事務所「アドバンスシティプランニング」まで、何でもお気軽にご相談下さい。

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