まだ動いているのに、なぜ交換をしなければいけないのか?
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設備管理の仕事をしていると、何度もいただくご質問があります。
「まだ動いているのに、なぜ交換を勧めるのですか?」
もっともなご質問です。
設備は動いている。
法令で定められた基準も満たしている。
それなら「もう少し使えるのではないか」と考えるのは、ごく自然なことです。
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株式会社アドバンス・シティ・プランニング
技術管理部 係長 - 西田 英雄
電気・水道設備を中心とした不具合対応、修繕見積の確認、工事日程調整、協力業者との連携など、建物管理に関わる技術実務に幅広く携わる。現場対応で培った設備知識と安全管理の視点を活かし、管理物件の安全性・快適性・資産価値の維持向上に取り組んでいる。
実際に、以前管理していた賃貸マンションでも同じ場面がありました。
地下に設置された汚水ポンプです。
定期点検で測定した絶縁抵抗は0.5MΩ。
100V回路としては法令で定められた基準値を満たしており、その時点では正常に運転していました。
その結果をご報告すると、オーナー様からこうご質問をいただきました。
「基準を満たしているなら、まだ交換しなくても大丈夫ですよね。」
数字だけを見れば、そのご判断は間違いではありません。
設備は動いていましたし、法令上も問題ありませんでした。
私たちも「使えません」とは申し上げませんでした。
ただ、一つだけお伝えしました。
「現在は使用できます。ただ、もし停止した場合、この建物では影響が大きくなる可能性があります。」
その時は、それ以上強く更新をおすすめすることはありませんでした。
設備がいつ故障するかを断言することは、誰にもできないからです。
数か月後、夜間に管理会社へ一本の連絡が入りました。
地下のトイレから汚水が溢れているというご連絡でした。
現場へ向かうと、汚水ポンプは停止していました。
ポンプアップできなくなった汚水は槽を満たし、行き場を失った排水が地下のトイレから溢れていました。
現場で最優先となるのは、故障原因の調査ではありません。
被害をこれ以上広げないことです。
夜間のうちに汲み取り車を手配し、溢水を止め、建物を安全な状態へ戻す。
その間も、テナント様からは
「営業は続けられるのか。」
「いつ復旧するのか。」
というお問い合わせが続きました。
ポンプはすぐに交換できる設備ではありません。
部品の手配や交換工事には時間を要します。
その間も応急対応を続けながら、テナント様へのご説明、オーナー様へのご報告、交換手配を同時に進めることになりました。
結果として発生した費用は、当初ご提案していた更新費用を大きく上回るものとなりました。
しかし、この出来事で最も大きかったのは、修繕費ではありません。
テナント様の営業に影響が出たこと。
オーナー様にご心配をお掛けしたこと。
そして、現場対応に多くの時間と労力を要したことでした。
この経験以降、私たちは見積書のご説明を少し変えました。
以前は、設備の状態や更新時期を中心にご説明していました。
現在は、それに加えて
「もし、この設備が停止した場合、この建物では何が起きるのか。」
というお話をするようにしています。
設備は、突然故障することがあります。
しかし、故障した後に起きる影響は、設備ごとに大きく異なります。
地下の汚水ポンプであれば排水ができなくなります。
給水ポンプであれば断水になります。
消防設備であれば建物の安全性に影響します。
大切なのは、設備そのものではなく、その設備が建物の中でどのような役割を担っているかです。
見積書には、設備の更新費用が記載されています。
一方で、その設備が停止した場合に起こる影響までは記載されていません。
だからこそ、私たちは数字だけではなく、その設備が建物にとってどのような存在なのかも併せてお伝えしたいと考えています。
更新するかどうかをご判断いただくのは、オーナー様です。
私たちの役割は、そのご判断に必要な情報をできる限り分かりやすくお伝えすることだと考えています。
見積書は、工事を決めるためだけの書類ではありません。
建物でこれから起こり得ることを、一緒に考えるための資料でもある。
私たちは、そのように考えています。
まとめ
今回は、現場の管理担当者へのアンケートをもとに、オーナー様が見落としがちなポイントでお話をご紹介しました。特に多く挙がったのは、
- 設備更新・大規模修繕を先送りしてしまうこと
- 建物の競争力を維持するための投資を後回しにしてしまうこと
- 設備トラブルへの対応が遅れてしまうこと
という3つでした。
どれも、「今は困っていない」「まだ使える」「今年は予算が厳しい」といった、ごく自然な判断から始まっています。
だからこそ、決して特別な話ではありません。
一方で、管理会社は日々さまざまな建物を管理する中で、
「あと少し早く対応していれば防げたかもしれない」という場面も数多く経験しています。
その経験があるからこそ、私たちは設備の状態だけではなく、将来起こり得る影響も含めてお伝えしたいと考えています。
設備更新や修繕は、決して「今すぐ工事をしてください」という話ではありません。
建物の状況や収支計画に合わせて優先順位を整理し、無理のない計画を立てることも大切な管理の一つです。
見積書は、工事を決めるためだけの書類ではありません。
建物の未来を考えるための資料としてご覧いただければ幸いです。
北辰不動産グループの株式会社アドバンス・シティ・プランニングでは一級建築士事務所からスタートした総合ビル管理会社となります。大きな特徴としては建物をワンストップで支える体制です。設備管理、ビルメンテナンスといったビルマネジメント事業、テナントの誘致、リーシングといったプロパティマネジメント両方を行っているのみならず、大規模修繕や企画設計、売買等、建物に関することを社内にて一気通貫して行っているためスピーディーに対応できることを強みとしています。
また都内を中心に幅広いエリアで管理業務を展開しており、600棟を超える実績がございます。
設計から管理までトータルでサポートできる「株式会社アドバンス・シティ・プランニング」に建物にまつわることをぜひお気軽にご相談ください。
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