家賃収入にプラスする収益力UPの実践アイデア
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小規模商業ビルは、駅前・繁華街・生活動線上など優れた立地にあることが多く、テナントからの出店需要は依然として堅調です。実際、ここ数年は空室率も減少傾向にあり、特に飲食やサービス業の出店意欲は高まり続けています。
しかし一方で、多くのビルオーナーが感じているのが「物価上昇率に対して賃料の伸びが追いつかない」という問題です。
電気代・人件費・建材費など、あらゆるコストが上昇し、テナント側もその負担を抱えているため、賃料を大幅に引き上げることは容易ではありません。結果として、ビル側の運営コストだけが上がり、収益性は横ばい、もしくは実質的に目減りしていく状況が起きています。
そこで
「賃料収入を基盤としつつ賃料以外の収益を戦略的に育てる」
ビル運営について考えてみてはいかがでしょうか。
大規模商業施設ではすでに常識となっているこの動きは、小規模ビルでも十分に実現可能な場合があります。本記事では、小規模商業ビルが取り組みやすいアイデアと、そのメリット・デメリットを整理しながら、収益最大化の考え方を解説します。
目次
小規模ビルでも「賃料以外の収益」を育てるべき?
オフィスや店舗の商業ビルは、収益を賃料だけに依存するとマーケットの変動に左右されやすくなります。たとえば、
- 賃料の値上げが難しい
- 更新タイミングが限られる
- 空室期間が発生すると収入が急減する
- 修繕費などの突発的コストに弱い
といった課題が挙げられます。
これに対して、付加価値収益(賃料以外の収益)を組み合わせると、収益構造に幅が生まれ、利益率が安定するというメリットがあります。
さらに、ビルの個性や立地特性を生かした収益源を設けることで、
「選ばれるビル」「集客力のあるビル」 へと育てることも可能になります。では、具体的にどんな施策があり、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
デジタル面を活かした「広告・プロモーション収入」
▼ 内容
エントランスや外壁、共用部にデジタルサイネージを設置し、広告枠として販売するモデル。
▼ メリット
- 手離れがよい収益源になる
一度仕組みを作れば、管理コストが比較的少なくて済みます。 - 地域の事業者・テナントの広告需要を取り込める
周辺の事業者にとって相性の良い宣伝媒体となるため、広告枠を提供しやすい施策です。 - 空間の賑わいづくりにも寄与
動的なビジュアルがビルを活性化させます。
▼ デメリット
- 初期設置コストがかかる
サイネージ設備費やメンテナンスコストが発生します。 - 広告主の獲得が必要
管理会社か外部業者の営業力が求められます。 - 景観への配慮も必要
設置場所や内容によってはテナントから意見が出ることもあります。
空室期間をプラスに変える「短期利用・イベント活用」
▼ 内容
短期ポップアップショップ、ギャラリー、展示会、ワークショップ会場などとして空室を貸し出す方法です。
▼ メリット
- 即効性が高い
数日単位で稼働するため、空室期間のロスを最小限に抑えられます。 - 地域との接点が増える
新しい客層が来館し、ビル全体の認知度が上がります。 - 長期入居につながる可能性
ポップアップ利用から恒常出店に発展する例も少なくありません。
▼ デメリット
- 日程管理・調整の手間が増える
入れ替え作業や契約手続きの頻度が高くなります。 - トラブルリスクの増加
売場づくりの未熟な利用者もおり、管理会社のフォローが必須です。 - 収益の安定性は低い
短期間のため月ごとに変動しやすい点は注意が必要です。
屋上・空きスペースの「活用ビジネス」化
▼ 内容
屋上を貸し農園、ヨガ教室スペース、簡易ビアガーデン、撮影場所などとして活用。
▼ メリット
- 未利用空間を収益化できる
これまで価値を生まなかった場所が、新たな収益源となります。 - 独自性の演出に強い
「ここにしかない」コンテンツは、集客にも良い影響を与えます。 - 地域イベントの受け皿にもなる
コミュニティづくりにつながるケースも増えています。
▼ デメリット
- 安全対策や設備投資が必要
ガードフェンス、照明、給水などの初期コストが発生します。 - 利用時間の制限がある
騒音や管理上の理由で深夜利用が難しいこともあります。 - 天候リスクがある
特に屋外利用の場合、キャンセルや稼働率低下の可能性があります。
周辺ニーズを取り込む「マンスリー・スポット貸し」
▼ 内容
倉庫利用、在庫保管、オンライン販売事業者の荷捌きスペースなど、短期〜中期の利用者へ貸すモデル。
▼ メリット
- 埋まりにくい小区画も活かせる
広さが不規則な区画でも需要がある可能性があります。 - 設備投資がほぼ不要
什器なしで貸せるため、利回りが高い施策です。 - 事業者の出入りがスムーズ
柔軟な契約形態で稼働率を上げやすい点が強みです。
▼ デメリット
- 荷物の品質管理・セキュリティ対策が必要
荷物の破損や盗難リスクがあるため管理の質が重要です。 - 利用者との契約期間が不安定
ニーズが季節要因に左右される場合があります。 - 動線によっては既存テナントの迷惑になる可能性
搬入・搬出の導線設計が欠かせません。
地域の“使われ方”を取り込む「スペースシェアリング」
▼ 内容
会議室、撮影場所、ワークショップルーム、スタートアップの短期オフィスなどとして貸し出す方法。
▼ メリット
- 使い方の幅が非常に広い
立地や広さを問わず、多様な利用者層を獲得できます。 - 地域との接点が自然と増える
学生やクリエイター、企業など異業種の人が集まる場所に育つことも。 - 空き時間の収益化が可能
時間貸しのため、細かく利益を積み上げられます。
▼ デメリット
- 予約管理や清掃の手間が増える
短期利用は回転が早いため、管理工数も高くなります。 - 騒音やマナーの問題が起こる場合がある
テナントとのバッティングを避ける調整が必要です。 - 価格競争が起こりやすい
近隣施設との差別化が求められます。
「収益の多様化」と、これからの小規模ビル運営
小規模商業ビルが安定した収益を維持し続けるためには、賃料収入を基盤としながらも、物価上昇に対し賃料アップが追いつかない現在の環境を前提に収益源の多様化を考えてみるのも戦略のひとつと言えるでしょう。
本記事で紹介したように、
- 空室の短期利用
- 屋上・余剰スペースの活用
- デジタル広告
- マンスリー倉庫利用
- スペースシェアリング
といった施策は、小規模ビルで柔軟に導入の可能性がある取り組みです。
しかし、これらを実際に“収益として根付かせる”ためには、単にスペースを貸すだけでは不十分です。
- 利用者の選定や契約調整
- テナントとの利害調整
- 動線・安全管理の設計
- PR・広告主獲得の営業力
- トラブル対応
- 収益シミュレーションの作成
- 地域ニーズの把握
継続収益には上記のような専門的な業務を適切に行う必要があります。管理会社は複数の商業ビル運営から蓄積されたノウハウを持ち、地域の事業者ネットワークや最新トレンドを把握しています。これらは個々のオーナー様では手に入れにくい大きな資産と言えます。お持ちのビルの立地と規模で実現できる収益最大化に向けた施策について、相談してみるのも良いかもしれません。
まとめ
- 賃料の値上げが難しい環境では、賃料以外の収益の育成が望ましい
- 小規模ビルは機動力が高く、新しい収益源を得られる可能性がある
- 収益の多様化はビルの安定性・収益性・地域での存在感を強化する
入居者がいる限り比較的安定的な収益が見込めるのが魅力のビル運営ですが、コスト高への対策かつ収益力向上を目指した施策を考えてみてはいかがでしょうか。
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