BIMとは?一級建築士が簡単にご説明

- 一級建築士・BIMマネージャー
- Iさん
- コピーしました
- この記事を印刷する
- メールで記事をシェア

人手不足や高齢化、資材の高騰と様々な問題を抱えている日本の建築・建設業界。
そんな建設業界で注目されているのがBIM(ビム)と呼ばれる技術です。
革新的な技術と言われる一方で2022年の国土交通省の調査においてもその普及率は半数以下となっているのも現状です。
一体どんな技術なのでしょうか?
一級建築士のIさんにお話を伺いました。
目次
BIM(ビム)とは
─── まず簡単にBIMとは何なのか教えていただけますでしょうか?
BIMを説明するのに設計図面を引くソフトウェアとして有名なCAD(キャド)と比較すると分かりやすいのですが、CADというのは壁等を描くためには線を2本書きます。その2本の線をもって我々はそれを壁として認識しますがBIMは描くパーツ自体に情報を持っているのです。
この要素は「壁ですよ」「間仕切り壁ですよ」「柱ですよ」といった具合に、その要素が何の情報なのか主張してくれるのです。
BIMとは「Building Information Modeling(ビルディング インフォメーション モデリング)」の略なのですが、CADとの違いはデータそのものに情報が入っているか否かということになります。
BIMのメリットと普及しない理由
─── BIMで従来の設計図を作ることも出来るのでしょうか?
もちろんできます。操作感としてはCADと近いです。
従来は、平明図は平面図、立面図は立面図、断面図は断面図、展開図は展開図とそれぞれ作成しないといけなく、窓の移動などの修正があった場合もそれぞれの図面ごとに修正しなくてはいけませんでした。
でもBIMだと全部がリンクしているので、一つ直せばすべての図に反映されるため、手直しの手間がすごく少なく済みます。
─── 修正作業によるミスがあることも減りますよね?
もちろんです。平面、立面、高さ関係、情報が全部入っているので正確ですし。
─── なるほど。色々とても便利そうなツールなのですがなかなか現場に浸透しないのは何故なのでしょうか?
BIM技術習得の難易度の高さと、多くの会社がすでに慣れているCADソフトを使っているというのが理由の一つとして挙げられると思います。例えばベクターワークスというCADソフトが月2.6万円程度に対して、BIM様々な機能が使える分月3万とか4万 とかしますし年間費用もかかってしまうので、どうしてもそこが導入におけるネックだと思います。
施工業者は多くの会社がJW-CADという汎用ソフトを使用している点も影響しています。
ただもしBIMがもっと普及して、施工業者も使えるようになるともっと便利になると思います。例えば梁や配管の情報もBIMに落とせるようになるのです。
そうすると工事前にある部分が干渉して図面上は納まっているけど実際は納まらず工事できないといった事柄がわかります。建物が建った後、運用・管理になった時点でもメリットがあります。
フロントローディングによる考え方
─── 具体的にどういうことでしょうか?
「フロントローディング」という考え方がありまして、従来は「実施設計」の段階にウェイト(時間とコスト)をかけていました。
その場合プロジェクトが進むにつれ様々な課題やトラブルが発生した時に、変更をする必要がでてきます。
そしてそのための「変更コスト」というのは基本的に後になればなるほど重くなります。
例えば工事が止まってしまったり、使用する部材も発注し直したりですね。
また工事がある程度進んでしまっているため「変更の容易性」というのも後になればなるほどしにくくなります。
それに対しBIMを利用して「実施設計」よりも前の「企画設計」「基本設計」の段階にコンピューター上でシミュレーションをすることで実現可能か判断できるようにすると、かなり前の段階で変更が出来るようになりますし、変更コストも軽くなります。
要はプロジェクトの重きをもっと前の計画段階にもっていき検証をすることで、変更が簡単になり変更コストも低く済むようになるという考えです。
そしてこの考えを最大限に生かすためには構造や梁・配管の設備関連の情報などもBIMに含めていき干渉チェックを行える事が大切になってくるのです。
実際の現場での活用について
─── なるほど、BIMが業界全体に浸透していくと様々な場面で役立ちそうですね。
現時点ではまだ完全に浸透できていないとのことですが、実務ではどのように活用されているのでしょうか?
私は開発事業部というところに所属していて、土地情報に対してその土地にはどんなものが建てられるのかというのを算出するボリュームチェックがメインの仕事です。
その際にBIMがとても役立っています。
土地情報をいただいた後建物配置計画を行い、それを3D化して道路斜線制限、北側斜線制限、日影規制、天空率等をBIMを利用して短時間で検証することが出来ます。それらの情報を視覚化してオーナー様に説明することが出来るというのが一番の強みだと思っています。
─── 確かにどこが制限で引っかかってしまうのか、など素人目で見ても確認しやすいですね。
そうなのです、何階まで建てられるかといったことや規制に引っかかってしまうのでここは修正しないといけないといったことをオーナー様と共有認識を持って話すことが出来ますし、意思決定も早くなります。
また汎用のCADソフトだと「天空率」「日影規制」の検証がとても手間と時間がかかりました。
それがBIMだと簡単に出せますし、仮に不適合の場合でもどこが悪影響を及ぼしているかも視覚的に分かるため、ギリギリまで建物面積を増やせるように何度も素早く検証することで土地の最大効率化にも役立てることが出来ます。
─── オーナー様としては土地を最大限に生かした建物を建てたいと思いますから、これはありがたいですね。
面積表というのも自動的に出力できますので各部屋の数値が変わった時も自動的に変わりますし、ミスが少ないのもメリットですね。
またBIMを利用するとパース等、かなり高度な3次元モデルを作ることも出来るので、リノベーションの案件でもBIMを活用しています。
リノベーション後のイメージをお客様に理解してもらいやすく提案時に利用できるからです。
─── 今回はBIMの基本情報や現時点での活用方法について教えていただきました。
下記の記事では、一級建築士Iさんに今後の活用方法に関して展望を語っていただきます。
アドバンス・シティ・プランニング会社案内

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。株式会社アドバンス・シティ・プランニングの会社紹介や事業内容をコンパクトにまとめた資料をご用意しました。ダウンロードは無料です。
ダウンロードする執筆・監修

- 一級建築士・BIMマネージャー
- Iさん
- コピーしました
- この記事を印刷する
- メールで記事をシェア