「遠隔管理」と「巡回管理」をわかりやすく解説

ビル管理は「設備が止まらないように見守ること」「トラブル時の対処」「日々の建物の品質維持」が基本。
大型の物件では規模により法的設置義務のある防災センターや管理人の常駐管理が主体です。しかし近年、ICT・センサー技術の発達により、中小規模ビルで遠隔管理が選択肢に加わり、管理スタイルの幅が広がっています。一方で、従来から主流の巡回管理にも根強い価値があります。

どちらの管理方法も目的は同じですが、向いているビルの特徴や、得られる安心感は異なります。本記事では、中小ビルにおける遠隔管理と巡回管理の違いを整理しつつ、ご自身の物件に適した運営スタイルを考えるヒントを解説します。

目次

遠隔管理とは 

 

遠隔管理は、防災設備・給排水設備空調設備・エレベーター・受変電設備など、ビルの基幹設備と監視センターをネットワークでつなぎ、リアルタイムに稼働状況を把握する管理方式です。設備から発信されるデータによって、異常や兆候が発生した際に迅速に通知を得られるため、現場へ駆けつける判断や対応がスムーズになります。また、取得したデータを蓄積・分析することで、将来的な故障予測や最適な保全計画にも活用できる点が特徴です。

メリット

  • 常時監視による早期トラブル発見
  • 深夜・休日でも状況把握ができ安心
  • 人件費削減によるコスト効率向上
  • 設備状態の見える化が可能

課題となりやすい点

  • 現場で直接の目視・接触が減る
  • ネットワークや機器導入が必要
  • 監視項目以外はビル内の細かな変化には気付きにくい場合がある

巡回管理とは 

巡回管理は、管理員が定期的にビルを訪問し、設備や共用部、清掃状態を人の感覚を使って総合的に確認する管理方式です。目視に加え温度やにおい、機器の作動音や微妙な振動など、異常発報の信号とは違うセンサーでは拾いきれない変化を捉えることができます。又、人を現地で見かける安心感や直接コミュニケーションを取りやすいことも特長です。

メリット

  • 人の視点によるきめ細かい異常検知(におい、音、温度感、清掃状態など)
  • 入居者・利用者の声を直接拾える
  • 現地での調整・改善がスムーズ

課題となりやすい点

  • 巡回の頻度や範囲によっては異常発見がしづらい
  • 巡回員のスキルにより品質に差がでる
  • 人件費がかかりやすい

夜間・休日対応は割高な費用になることも  

中小規模ビルならではの管理ニーズ  

大規模ビルに比べて設備構成がシンプルな一方、管理費にかけられるコストについての制約が厳しいケースが多くあります。また突発的なトラブル等、必要な時だけ管理負荷が急に高まるのも特徴です。

  • 管理コストの最適化
    管理費総額を抑えつつ安全性を維持したい
  • テナント・利用者満足の確保
    快適性・清潔さ・安心感を損なわずに運営したい
  • 突発対応の不安
    設備トラブル時にすぐ見てくれる仕組みが必要

このように、「安心感」と「効率性」のバランス設計が重要となります。


 

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不動産を管理する形としては大きく分けて「自主管理」と「管理会社に委託する(管理委託)」の2つがあります。それぞれメリットやデメリットをご紹介してまいります。

管理会社を選ぶ際のチェックポイント 

 観点  遠隔管理  巡回管理 
 安心   常時監視で異常を即把握   人の視点で細かい変化に対応可能 
 コスト   人件費負担が軽い傾向   手厚い分コスト負担あり 
 対応スピード  覚知→駆けつけで効率化  現場で異常発見時は即対応可
 データ活用   設備状態の見える化が進む   人的経験やペーパーでの記録に依存する部分も 
 設備状態の把握   主要設備に強い   建物全体を総合的に把握できる 

「どちらが優れているか」という話ではなく、建物が求める管理強度がどこにあるかが選択の軸となります。

組み合わせで高まる管理レベル  

遠隔管理と巡回管理は、どちらか一方だけで完結させる必要はありません。
両者はむしろ 互いの弱点を補い合える関係です。

それぞれの強みが補完し合う例

  • 遠隔監視で異常信号を受信 → 巡回で現場の状態を深掘り
  • 巡回で細かな劣化や清掃状態を確認 → 遠隔で継続監視
  • 常時の安心感(遠隔)+顔が見える管理(巡回)
  • 定期巡回時に、遠隔で得たデータを踏まえて重点チェック
  • 監視が難しい細部は巡回でフォローし、死角をなくす

結果として、「普段から見守られ、必要なときに人が動く」柔軟な管理になる場合があります。

 管理方法選定のポイント   

ビル設備の重要度

  • エレベーター・電気設備・防災設備など、停止リスクが大きい設備が多い → 遠隔管理が有効
  • 共用部の利用が多く日常管理の質が問われる → 巡回の価値が高い

管理時間帯のニーズ

  • 夜間や休日の利用がある遠隔の常時監視が安心

予算と得たい安心感のバランス

  • コストを抑えても監視体制は維持したい遠隔中心+最小限の巡回
  • テナント満足を重視巡回頻度を高める

入居テナントとの距離感

  • 相談や苦情対応が多い現地訪問型が安心材料になる可能性
  • 安定運営で交流が少ない遠隔対応でも十分なケースも

物件ごとの状況に応じた管理方法を検討すると良いでしょう。 

まとめ

遠隔監視と巡回点検は、それぞれ得意とする役割が異なります。速報性を活かして故障兆候をいち早く把握する方法、現場での確認を通じて細かな劣化や清掃状況を掴む方法など、施設の規模・運用体制・コストなどに応じたふさわしい体制があると言えます。
それぞれの特徴を踏まえ、ご自身のビルにとって効果的な組み合わせや活用方法を検討してみてはいかがでしょうか。

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