不動産情報コラム

【現役ビル管理士が教える】ビルオーナー様にとって居抜き物件のメリット・デメリットとは

作成者: ビル管理|Sep 22, 2023 2:09:52 AM

飲食や物販などの店舗で見かける居抜き物件。借主であるテナントにとってのメリット・デメリットについては、退去するテナント、次に入居するテナントともに多く解説されているのですが、貸主であるビルオーナー様は居抜き物件をどう考えれば良いのでしょうか。ビルオーナー様にとっての居抜きのメリット・デメリットについて、仲介の現場やビルの設備管理、また契約時の注意点などについても詳しく説明していきます。この記事は2023年4月に配信したウェビナーの内容を一部抜粋しております。全体の内容はぜひ動画でもご覧ください。ご覧になりたい方はこちらから

居抜き物件とは

実は不動産の契約書に「居抜き」という言葉は使いません。契約の際には通常と同様に賃貸借契約書と記載されています。私たちが言う「居抜き」とは、基本的にオフィスや店舗など前に借りていた入居者の内装が残っていて、人がいなくなっただけの状態の物件を総称して言います。内装が残っているので次の入居者さんは営業がしやすい状態と言えます。例えばスナックの内装は残っていて、備品やお酒のボトル、看板がなくなっているところを次のママさんが借りて、内装をそのまま使って新しい店舗名で営業をスタートするといったケースがわかりやすいかと思います。

スケルトンとは

一般的に床や天井などの内装が取り除かれて、躯体が剥き出しになっている状態を言います。店舗の賃貸借契約ではスケルトンで契約して内装はお店側で自由に造るのが一般的です。

居抜きのメリット・デメリット

居抜きについて借主側のメリットデメリットは紹介されることが多いですが、貸す側であるビルオーナー様にとってのメリットデメリットにはどのようなものがあるでしょうか。まず一番大きなメリットは、内装が残っていることによって次のテナントが決まりやすくなる点です。空室期間が長くなると賃料収入が減ってしまいますので、賃料収入がない期間が短いのは非常に大きな意味があると言えるでしょう。
対してデメリットは、同じことの裏返しではありますが内装が残っていることで、むしろ次のテナントが決まりにくくなってしまう原因となってしまう点です。残っている内装が気に入らないとか、設備が使えないといったことが理由として挙げられます。例えば同じ飲食店でもラーメン屋さん・イタリアン・お蕎麦屋さんなどそれぞれ厨房の設備は異なりますし、ふさわしい店内のレイアウトも違ってきます。
一方美容室などの場合は、綺麗で物件も美容室向けであればそのまま使えるケースもあります。要するに内装があると設備の面から業種が限定されてしまいます。厨房の水回りや換気設備はそのお店にとって最適なものを作るので、違う業態のお店が次に居抜きで入るのは難しいと言えるでしょう。前店舗と同じ業態しか入ることができないのが居抜きの大きな特徴だと思います。

居抜きで発生する設備の問題点

ビルの設備の面で言うと、古い内装というのはビル側の設備が内装によって隠された状態で、ビルの設備が古くなっても見えません。例えば10年に1回のタイミングで配管を直したいとか、水道メーターを取り替えたいと思っても触るのが難しくなってしまいます。するとビルのリニューアルがなかなか進まないという問題が起こる可能性があります。
また漏水で下の階に水が漏れてしまったなどのトラブルが居抜きで起こると、責任の区分がより複雑になります。賃貸借契約の内装の所有はテナントになりますが、見えないところで水が漏れたりすると、それがビル側の配管なのかテナント側の配管なのかがわかりづらいです。わかったとしても、今入ってるテナントからすると、自分が作った内装ではなく内装がある状態で入居しているので、自分の過失にあたるという意識が薄いことがあります。トラブルの原因を明確にして直してもらわなければなりませんが、責任がビル側(ビルオーナー様)なのか、テナント側なのかを説明して理解していただくことに手間取るケースもあります。同時に保険会社が行う被害に対する補償について、どちらが入っている保険で対応するかを決めるためにも責任の所在を明確にしなくてはなりません。

居抜きのリーシングのすすめ方

居抜きがメリットになりそうなケースかどうかは、物件やその時の状況によって都度変わってくるので、専門家に相談するのが望ましいです。どのような進め方がベストなのか見極めることが重要です。前のテナントが内装を残したいというケースはよくあるのですが、例えば「半年間だけ居抜き状態で募集活動をする・決まらなかったらスケルトンにしましょう」といったルールを作る方法もあります。必ずしも居抜きがベスト、あるいはスケルトンの方がベストだとも言えないような時の募集の方法として、ケースバイケースで様々な方法が考えられます。

店舗リーシングのトレンドと居抜きに適した物件とは

株式会社アドバンス・シティ・プランニングの企画リーシング部が担当しているエリア(港区・渋谷区・目黒区・世田谷区)では、新型コロナウイルスなどの影響や若者の流行などが、様々なかたちであらわれてきました。例えば3密を避けることができるゴルフの流行に合わせてシミュレーションゴルフの練習場が問い合わせ件数も急増し、実際にお店も増えました。またサウナも増えていて、何件か契約しています。ただサウナは設備などの確認が難しい業態です。建築基準法の用途が公衆浴場になりますし、公衆浴場法の規制もあります。また設備に関しては湿気の問題もあります。小さいサウナだと、もともと取り扱ってるメーカーも少なく、海外メーカーのものだと規格が合わなかったりすることもあり、作るのが難しい業態です。
居抜きにするかどうかを判断する際には、ビルの特性やエリアの特徴、またその時の市場などを見極めることが重要です。例えば今まではずっと飲食が入っていたけど最近のトレンドとしてはジムがむいているとか、いや事務所仕様にした方が決まりやすいといったようにその時々によって変化があります。またそのようなエリアの特性や市況に合っていたとしても、あまり内装が古いとデメリットになってしまうことがあります。
実際のところ居抜きの契約はあまり多くはありません。飲食はもちろん多いですが、それ以外の美容室や物販、またこれまであまりなかったようなサウナやゴルフ練習場など、店舗は業種が非常に多岐に渡ります。よって前と同じ業種という縛りのないスケルトンで、いちから内装を作る契約が多いです。居抜きに適した業種は飲食店が代表的ですが、アパレルなどの物販の内装も適していることがあります。どの業態にも使いやすく、設置に費用がかかるエアコンとトイレが残っている状態だと、スケルトンにしてしまうよりも次のテナントも仕上げを少し変えるだけでイメージを変えることができるので、出店のハードルが下がる場合があります。ビルオーナー様にとってもエアコンとトイレは残っていてもデメリットになりにくい設備であるケースが多いです。

契約時の注意事項

居抜きの場合は、テナントが所有して責任を持つ範囲を明確に書いておくことが重要です。内装は残置物なのであとは全部テナントでやってくださいと契約書に書くだけだと、責任の範囲が不明確でトラブルの元になってしまう危険性があります。リスト化して写真と文字で記録していく必要があります。例えば扉、エアコン、トイレなどはどっちのものかわからなくなることが多いので、ビルオーナー様と新しく借りるテナントに確認し、文書化した上で契約してもらいます。ビルオーナー様も10年、20年経つと代替わりしていることもありますし、売却してオーナー様が替わっている場合もあります。また契約に携わっている管理会社も長期間同じ担当者がいるとは限りません。誰が見ても内容がわかる書類を作ることが大切です。まれではありますが設備のトラブルが起きた際に、書類などの根拠となるものがないがためにビルオーナー様側の負担になることもあるので注意が必要です。前のテナントさんの残置物で次のテナントさんの方で責任を持つということが口頭で確認されていても、例えば前のテナントが退去して残置物の所有権を放棄した状態で、次のテナントの内装の造作が始まるまで宙ぶらりんの状態だと、ビルオーナー様の責任になってしまうケースもあります。
居抜きにはメリットもありますがデメリットになる場合もあります。そのデメリットをトラブルに発展させないために、ビルオーナー様やテナントにきちんと明確に説明することが大事です。

終わりに

ビルオーナー様にとって、居抜きで次のテナントがすぐ入居するのは賃料収入の空白が少ないという大きなメリットです。
一方立派な内装を壊してスケルトンにする工事はビルにとってストレスにもなります。例えば解体工事で、館内の他のテナントが埃まみれになってしまわないように養生する作業も発生しますし、飲食店の防水や厨房の設備などは作るのも壊すのも大変です。音や振動が発生するような工事はそれ自体がビルの本体に負荷がかかります。建物にそのような負荷をかけなくて済むというのもメリットの一つと言えるでしょう。居抜きかスケルトンか、適したリーシングの仕方は個々の物件によっても、またその時々によっても異なりますのでまずは相談してみてみてはいかがでしょうか。

この記事の監修

網代 淳一
管理本部部長 建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)

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