賃貸不動産を所有・運用することで、減価償却費や管理費、修繕費などを必要経費として計上できる場合があります。また、不動産所得が赤字となった場合には、一定の範囲で給与所得や事業所得などと損益通算できることがあります。
ただし、不動産を購入すれば必ず税負担が軽くなるわけではありません。物件価格、土地・建物の割合、建物構造、築年数、借入条件、所有者の所得状況などによって、税務上の効果は大きく異なります。
本記事では、2026年時点の制度を踏まえ、賃貸不動産が税金に与える影響と、検討する際の注意点を整理します。
不動産所得は、家賃や共益費などの収入から、その収入を得るために必要な経費を差し引いて計算します。
必要経費には、固定資産税、損害保険料、管理費、一定の修繕費、借入金利息、減価償却費などが含まれる場合があります。支出した金額がすべて経費になるわけではなく、不動産賃貸業との関連性や、修繕費・資本的支出の区分を確認する必要があります。
不動産所得が赤字になった場合は、一定の範囲で給与所得や事業所得などの黒字と損益通算できることがあります。ただし、土地を取得するための借入金利子に相当する部分など、損益通算できない金額もあります。
引用元:国税庁(No.1391 不動産所得が赤字のときの他の所得との通算)
なお、帳簿上の赤字で税負担が下がっても、実際のキャッシュフローが悪化している場合があります。税務上の効果だけでなく、返済後の手残りや将来の修繕費まで確認することが重要です。
実際、投資用の物件を運用して節税をするのには、どのような対策が必要なのか解説します。
物件を賃貸物件として経営するのに関連する費用は、経費として計上することが可能ですが、中でも減価償却費は不動産事業で節税するために重要な経費となります。
この減価償却費は、帳簿上のみの経費とも呼ばれていて、実際の支出は発生していませんが、物件の金額と耐用年数に応じて毎年一定の金額を経費として計上することができます。
減価償却費の金額は、建物・設備の取得価額、構造、築年数、法定耐用年数などによって異なりますが、物件価格が高ければ減価償却費も必ず大きくなるわけではありません。
土地は減価償却できないため、売買価格のうち土地と建物がどのように区分されるかも重要です。
また、短期間に大きな減価償却費を計上できる物件が、投資対象として優れているとは限りません。築年数が経過した物件では、融資期間、修繕費、賃貸需要、売却可能性なども確認する必要があります。
その他にも、登記をするために依頼した専門家への報酬、物件までの交通費なども経費として計上することができるので、領収書などは申告まで保管しておくといいでしょう。
その他の細かい経費は国税庁(No.2210 必要経費の知識)からご覧いただけます。
個人事業主であれば、確定申告の時に白色申告ではなく、青色申告をすることも節税対策として効果的な方法であることはご存じだと思います。
青色申告は複式簿記で帳簿を記帳して提出する必要があるので、書類作成の負担は大きくなりますが、白色申告に比べると簡易簿記でも10万円、要件を揃えれば55万円、最大で65万円分の控除額を増やすことができます。
この65万円の控除を受けるための要件は、次のようになっています。
(1) 「55万円の青色申告特別控除」の要件に該当していること。
(2) 次のいずれかに該当していること。
イ その年分の事業に係る仕訳帳および総勘定元帳について、電子帳簿保存(下記<参考>参照)を行っていること(※)。
ロ その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表および損益計算書等の提出を、確定申告書の提出期限までにe-Tax(国税電子申告・納税システム)を使用して行うこと。
引用元:国税庁(No.2072 青色申告特別控除)また、不動産経営では消費税や所得税、住民税の他にも事業税が発生します。
不動産賃貸業の規模によっては個人事業税を支払うよりも法人事業税を支払う方が税金の額を抑えることができる場合もあるので、一度専門家に相談してみるのもいいでしょう。
法人による青色申告は、上記の特別控除の優遇制度が無かったり承認制であるなど、個人事業主とは異なる内容となっています。得られる特典も違いますが、大きなメリットがありますので積極的に活用をお薦めします。
法人の青色申告では、一定の欠損金を最長10年間繰り越し、将来の所得と相殺できる場合があります。また、中小企業者等では、一定の要件のもとで欠損金を前事業年度へ繰り戻し、法人税の還付を請求できる場合があります。
なお、2026年4月1日以後に開始する事業年度から、防衛特別法人税が導入されています。法人化を検討する際は、所得税と法人税の税率差だけでなく、役員報酬、社会保険料、法人住民税、設立・維持費用、新たな法人税制を含めて比較する必要があります。
引用元:国税庁(No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除)
:国税庁(No.5763 欠損金の繰戻しによる還付)
この他にも、中小企業者等が2026年4月1日以後に取得等をする減価償却資産については、取得価額40万円未満のものを、一定の要件のもとで取得年度の損金に算入できる特例があります。対象となる取得価額の合計額は、引き続き年間300万円が上限です。
対象法人、資産の用途、従業員数、申告手続などにも要件があるため、適用にあたっては税理士等への確認が必要です。
引用元:国税庁(No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例)
小規模企業共済は、個人事業主や会社等の役員が、廃業時や退職時などに備えて積み立てる制度です。掛金は、税法上「必要経費」ではなく、「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除の対象になります。
そのため、不動産賃貸業を行う個人事業主が加入できる場合には、支払った掛金の全額を所得控除として扱えるため、課税所得を抑える効果が期待できます。国税庁でも、小規模企業共済等掛金控除は、支払った掛金について所得控除を受けられる制度と説明されています。
ただし、不動産賃貸業を行っていれば誰でも加入できるわけではありません。不動産所得のみで申告している場合は、事業と認められる一定規模以上の賃貸条件を満たしていることなどが必要です。具体的には、貸家等で5棟以上、アパート・マンション等で10室以上、駐車場や土地の場合は50先以上といった基準が示されています。
また、小規模企業共済は将来の退職金づくりに近い制度であり、単純な節税商品ではありません。共済金を受け取る際には、一括受取りの場合は退職所得、分割受取りの場合は公的年金等の雑所得として扱われます。加入を検討する際は、現在の所得だけでなく、将来の受取時期や他の退職金制度との関係も含めて確認することが大切です。
引用元
No.1135 小規模企業共済等掛金控除| 国税庁
納付した掛金は経費になりますか。 |共済サポート navi
個人事業主として不動産賃貸業をしています。加入できますか。 |共済サポート navi
賃貸物件として使用することで節税ができる種類と、節税するために必要な対策は以下の通りです。
税区分によって対策や方法は異なるので、節税対策をする際はご注意ください。
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種類 |
対策や方法 |
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【所得税・住民税】 |
減価償却の活用 |
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青色申告特別控除を利用 |
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青色事業専従者給与 |
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管理会社の設立 |
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小規模企業共済 |
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適切な修繕費の費用計上 |
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諸経費の費用計上 |
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赤字が出た場合の損益通算 |
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【相続税】 |
借地権割合と借家権割合の適用 |
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【贈与税】 |
暦年課税・相続時精算課税の選択を含む贈与計画 |
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【固定資産税・都市計画税】 |
住宅用地の軽減措置が適用される |
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しかし、不動産を賃貸物件として運用する際、注意すべき点もあります。
必要経費として計上できるのは、不動産収入を得るために直接必要であり、私的な支出と明確に区分できる金額です。
引用元:国税庁(No.2210 必要経費の知識)
交通費、通信費、交際費なども、不動産賃貸業との具体的な関連性や支出内容を説明できなければ、必要経費として認められない場合があります。領収書だけでなく、訪問先、目的、相手方などの記録を残すことが重要です。
また、建物の価値を高める工事や使用可能期間を延ばす工事は、修繕費ではなく資本的支出として減価償却が必要になる場合があります。
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控除額 |
不動産条件 |
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65万円 |
アパート10室以上、貸家は5棟以上※ |
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10万円 |
マンション1室から |
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「青色申告を行う」でもご紹介しましたが、個人事業主は青色申告をすることで最大の65万円控除を受けることができます。
ですが、最大65万円の控除を受けるためには不動産所得要件が定められていて、所有する物件の数や種類によって青色申告でも受けられる控除額が異なります。
※具体的には、不動産貸付けが事業的規模で行われ、複式簿記による記帳や期限内申告などの要件を満たす場合に、最高55万円の青色申告特別控除を受けられます。
さらに、e-Taxによる申告または一定の電子帳簿保存要件を満たす場合は、最高65万円となります。
建物の貸付けでは、おおむね10室以上または独立家屋おおむね5棟以上が、事業的規模を判断する一つの目安です。ただし、最終的には貸付けの実態を踏まえて判断されます。事業的規模に該当しない場合の控除額は、原則として最高10万円です。
また、法人でも資本金により欠損金の控除限度額に上限があるなど注意が必要です。
節税効果を期待して不動産経営を始めた場合でも、条件に当てはまらなければ最大の控除額が受けることができないので、はじめての申告の際には注意が必要です。
「規模次第では法人化もおすすめ」でもご紹介しましたが、こちらも規模によって異なります。
管理する物件によっては、個人事業主で保有した方が良いケースもあるので、税理士などの専門家に確認することがおすすめです。
エアコン交換やクロスの張替えなどの支出は、工事内容や金額により、修繕費として一時に必要経費へ計上できる場合と、資本的支出として減価償却する場合があります。
単に「修繕」という名称で支払っただけでは判断できないため、工事内容を確認する必要があります。
家族へ資産を相続する際、現金では高額な相続税が発生することがあります。
もしも、相続税が高額になる予想がされる場合、土地を購入して固定資産として次世代へ相続するのも相続税対策としておすすめです。
相続対策として賃貸不動産を検討する場合は、相続税評価額だけでなく、賃貸需要、管理負担、修繕計画、借入金、相続後の分けやすさ、売却可能性まで確認する必要があります。
将来の値上がり予測だけを根拠に物件を選ぶのではなく、現在の賃貸需要と収益性を基準に判断することが重要です。
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土地はアパートやマンションと違い劣化することがないので、減価償却費が経費計上できないというデメリットがあります。
さらに、更地の場合は住宅が建っている土地に適用される「住宅用地に対する課税標準の特例措置」が適用されないため、相対的に多額の固定資産税が発生してしまいます。
住宅の敷地であれば、一定の要件のもとで固定資産税・都市計画税の住宅用地特例が適用されます。小規模住宅用地では、住宅1戸につき200㎡までの部分について、固定資産税の課税標準が価格の6分の1、都市計画税は3分の1となります。
一方、土地を単独の駐車場、資材置場、空地、事務所や店舗のみの敷地として利用しても、原則として住宅用地特例の対象にはなりません。
また、住宅を新築すれば必ず土地と家屋を合わせた税額が下がるわけではありません。新たに建築した家屋には固定資産税が課されるため、建築費、収益性、将来の修繕費まで含めて検討する必要があります。
しかし、不動産賃貸業で節税効果を期待する場合、条件次第では節税効果が期待できない場合もあります。
不動産賃貸業で節税が向いている方のタイプはこちらです。
賃貸不動産の所有・運用により、必要経費、減価償却、青色申告、損益通算などを適用できる場合があります。
ただし、税負担が軽くなっても、空室や修繕、借入返済によって実際の資金収支が悪化しては、安定した資産形成にはつながりません。税務上の効果だけでなく、長期的な収益性とキャッシュフローを含めて検討することが重要です。
個別の税額計算や制度の適用可否については税理士等へ確認し、不動産会社には物件収支、賃貸需要、管理、修繕、売却可能性について相談するという役割分担が適切です。
不動産投資に興味がある方は、お気軽にご相談ください。
本記事は、賃貸不動産と税金に関する一般的な制度や考え方を紹介するものです。個別の税務上の取扱い、必要経費への算入、損益通算、減価償却、青色申告、相続税評価、法人化の有利・不利等は、所有者の所得状況、物件内容、取得時期、利用状況、借入条件、法改正等によって異なります。実際の申告や税務判断については、税理士等の専門家にご確認ください。