2020年04月15日

新型コロナウイルス 不動産投資市場への影響は?

世界中で新型コロナウイルスの脅威が広まっています。世界の大都市がロックダウンを行い感染の広がりを抑えている中、日本でも緊急事態宣言が出るなど大都市を中心に暮らしや経済活動に大きな影響が出始めています。不動産業界も例外ではありませんが、実需と投資では影響のレベルに違いがあるようです。

 

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Yahoo!ニュースでも「不動産価格が7割下落」というようなセンセーショナルな見出しが取り上げられていますが、一口に不動産業界と言っても、実際に住むのか投資用で購入するのか、投資用の中でもエリアや物件規模、テナント種別など多岐にわたります。その中には既に大きな影響を受けており、今後価格を下げる可能性がある物件と、まだ大きな影響はまだ受けておらず、今後の価格への影響も比較的少ないのではないかと思われる物件があります。

 

1. 新型コロナウイルスの経済活動への影響

 大きな影響を受けるインバウンド市場

各国で新型コロナウイルスの感染拡大防止対策が取られており、アジアや欧米からの訪日客が激減しています。出入国在留管理庁の発表によると、2020年2月の外国人入国者数は前年より140万人以上の減少。比率でいうと約55%の減少となりました。減少数の内訳をみるとそのほとんどはアジアからの入国者で、中国に至っては前年から9割近く減少しています。


また、りそな総合研究所が2月12日付で発表した「新型肺炎がインバウンド市場に与える影響」によると、インバウンド市場に与える影響が全国で6244億円と試算しています。観光客をターゲットにした物販やホテル、旅館業はもちろん、ここ数年不動産投資家が注目していた民泊物件の影響も大きく、時間貸しやマンスリーの賃貸など、稼働率を上げる活用方法を模索しているオーナーも多いようです。

 

 自粛ムードが国内消費へ与える影響

国内でも感染者が出始めた2月以降、自粛ムードが広がり消費が落ち込む中、ついに4月7日に安倍首相より型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言が発令されました。

それを受けてりそな総合研究所が4月9日に発表したレポート「緊急事態宣言の発令による各地域への影響」では、全国の消費が計4兆9千億円減少(既に減少している分も含む)するとの試算を発表しています。人の移動が大幅に減ることで外食や宿泊、娯楽、衣服などの消費が打撃を受けることが主な原因で、エリア別では関東と関西では85%、九州・沖縄で75%、それ以外の地域で70%減ると予想しています。

 

東京ではすでに百貨店や飲食店などについては自主的に休業している店舗も多いなか、4月10日に具体的に業種を指定した休業要請を発表。休業や時短営業に応じる店舗も多く、娯楽施設などの休業が広がっています。

 

2. 不動産市場への影響

 商業ビルは賃収下落リスクに注意

インバウンド需要の低下や外出の自粛による内需の低下の影響は、売上の低下が顕著な飲食店や物販店など中心に、テナント賃料の支払い猶予や減額の交渉という形で表面化し始めています。売り上げが下がった事業者への公的な支援が十分とは言えず、ビルオーナー側としては、退去されてしまうのであればと、そういった申し入れを受け入れるかどうか難しい選択に迫られているのが現状です。投資用物件として考えた際、商業ビルについてはこういった賃収下落リスクを考える必要があるため、先行きが不透明なこの時期は検討がしづらいでしょう。

 

 

オフィスの移転、分散化、縮小の動き

テレワークが恒常化したことで、今までのようなオフィス全社員が集まれる広いオフィスは不要ではないか、あるいは、分散したり、地方に移転したり、といった動きが出てきています。

コロナが終息したとしても、テレワーク体制が恒常化したことで、企業の意識が大きく変わり、例えば「クリエイティブオフィス」といった従来からあったオフィスのあり方を「感性価値を創造する場」へと変えていくという動きも、このテレワーク体制に伴うオフィスの有り方の見直しに際して、本格化する可能性もあります。

こうした動きがオフィスを中心とした空室率や賃料相場に影響を与える可能性があります。

 

 

 

 実需(自用)の区分マンションは新築と中古で影響に差があり

実需の住居に関しても、上記のような経済活動の制限から「消費マインドの低下」が発生しており、購入を見送っているという話を聞きます。価格が今後下がるかもしれないという期待感から、どうしても今すぐ購入しなければいけない理由がある人以外は待ちに入っているようです。

 

ただ、新築分譲マンションについては建設コストがかかっておりそれほど安くできないことに加え、そもそも完成後も数年かけて全戸を売り切る販売モデルを取っているため、多くの物件では価格面への影響は少ないと考えられています。

その中でも懸念されているのが、東京オリンピックの五輪選手村を再利用するマンション「HARUMI FLAG」。1次販売分の約900戸がもう契約済みですが、追加販売についてはオリンピックの開催延期にあわせて延期が発表されました。もともと、オリンピック終了後にリノベーション工事を行い、2023年3月の引き渡しを予定していたため、オリンピックの延期の影響はある程度吸収できると考えられておりますが、今後の販売スケジュールによっては住宅ローン金利などの市況にあわせて価格などの販売条件が変わってくる可能性もあります。

 

逆に、中古区分マンションについては事情が異なります。個人のオーナーが住み替えなどのため現在の住居の売却を考える場合、多くの場合長くても半年以内に買い手を探そうとします。ですが、消費マインドが低下しているこの時期、希望価格で買い手を見つけるのは通常よりも困難になるでしょう。今売らなくてもよい方であれば市況がよくなるまで売却を控えることができますが、今すぐ売らなくてはいけない方は価格を下げてでも売却をしようとするでしょう。

実需で探す方はもちろん、こうした物件が出てくるの待っている投資目的の方にとっては、絶好の購入タイミングと言えます。

 

 海外の投資用不動産市場は減速の動き

投資用不動産に目を向けると、海外の市場では短期的な減速が起こるとみられています。多くの投資家が投資決定を先送りし、様子見の姿勢に入っているからです。顕著なエリアとしては中国本土はもちろん、海外投資家が現状視察できないなどの理由で、オーストラリアやシンガポールでも売主が売却の延期を検討しているという話も聞きます。

とはいえ、資金が潤沢にある海外の不動産投資ファンドなどの投資意欲は引き続き高いままのようで、中国に対して慎重になる半面、日本に対する関心が高まっているようです。また、乱高下する株式から早々に資金を引き揚げ、比較的相場が安定している不動産へ投資する動きも見られます。

 

 国内の投資用不動産については今のところ影響は軽度

一方、日本国内の投資家に目を向けると、国内の投資家の需要は引き続き高いままで、「融資が通れば」購入したいというマインドにはあまり変化が見られません。金融機関の融資姿勢も今のところ厳しくなったという声も聞きませんが、担当の出勤日削減などにより、審査結果が出るまで通常よりも時間がかかる傾向にあるようです。また、新築築浅の物件であっても一定以上の自己資金が必要という状況は変わらないようです。

 

不動産価格に関しても、前項で上げたような価格下落リスクのある物件や、相場の上昇にあおられて高くなりすぎた好立地とは呼べない物件以外は値崩れしにくいのではと考えています。具体的に言うと、東京23区内を中心とした駅近で、道路付けの良い整形地の築浅レジ物件の価格はそれほど下がらないと考えます。

 

理由としては、そもそも資産価値の高いエリアである上に、レジ物件の賃貸需要はこういった景気の変動の影響を比較的受けにくい特徴があるためです。ただし、タワーマンションの高層階などの高級賃貸物件に関しては例外で、リーマンショックの際は空室が大量に発生し、なかなか借り手が見つからなかったという実例があります。

 

好立地の築浅レジ物件が値下がりし辛いもう一つの理由としては、そういった物件の購入を相続などの税金対策で検討されている富裕層が一定数おり、金融機関もそういった層への融資は積極的に行う姿勢に変化が見られないからです。昨年、相続発生直前の物件購入や相続発生直後の物件売却が行き過ぎた相続対策と国税庁に判断され、申告が否認されたというケースがニュースでも取り上げられました。否認されない一つの目安としては相続発生の3年以上前の購入といわれておりますので、相続対策で購入を検討されている方の住居系ビルの購入マインドは引き続き好調であると言えます。

 

 

3. まとめ

今だ収束が見えない新型コロナウイルスの流行ですが、今のところ日本国内の不動産市場に関しては影響は限定的であるようです。経済の悪化による退去リスクは店舗や事務所などの商業テナントが大きく、個人向け住居に関しては少ないからです。

一方で、商業ビルや店舗が混在するような一棟ビルについては、都心の一等地は別としても、テナント退去や空室期間の長期化、賃料の値下げといった悪化があるため、住居系ビルのように影響が少ないとは言えません。但し、現時点では銀行融資を急に返済を求められるといった事態に放っていないと思われるため、安い値段でこうした空室に困ったビルが売りに出されるということはまだ少なく、投資家も様子見している状況にあると思われます。

水面下で空室に困ってたビルオーナーが、非公開でビルを売りに出しているという物件がゼロではないですが、バブル崩壊時のように急増しているというところまでは売り物は増えていないようです。

 

また、海外の投資家の日本国内への投資意欲も引き続き好調で、国内でも相続対策や長期保有の資産購入を検討されている投資家も引き続き物件を探しているため、好立地の物件であれば大幅な価格の下落も起きにくいでしょう。大事なことは、賃貸需要の高いエリアで入居が見込まれる不動産を選ぶことです。

 

---10月7日記事追加---

つい最近も香港の投資ファンドが日本の不動産に8400億円もの投資を行う方針だという記事が流れました。(2020年9月18日付け日経新聞)

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例えば好立地の新築・築浅一棟RCマンションであれば、将来に渡って安定した稼働と賃料収入が期待できる上、当面は突然の修繕費などリスクも低いという大きなメリットがありますので、このような状況下でもお勧めできる不動産であるといえます。

 

この記事を書いた人

C+One 編集部

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