2019年12月18日

投資スタンスに合った物件選びがポイント!「マンション一棟買い」VS「区分所有」

不動産投資を始めた方から「区分所有のマンションを複数もつのと、一棟ビルを所有するのはどちらがいいですか」という悩みをよく聞きます。

さらに区分所有については比較的安価な1ルーム、1Kタイプの他、1戸1億円を超えるような「タワーマンションの上層階」という選択肢もあり、ますます悩まれるのではないでしょうか。

マンション一棟買いか区分所有か

まずは、一棟ビルにも区分マンションにもいろいろありますから、比較するためには一定の条件に絞った方が誤解もなくわかりやすいでしょう。

エリア 首都圏
投資規模 1億円~3億円前後
種別 住居系(一棟ビルの中でも一棟マンション)
築年 築10年未満

築年は築浅、中古、築古(旧耐震)といった年数でも、またそれぞれメリット、デメリットの違いが出てきますが、複雑になりますので、今回は、10年未満の築浅物件で比較します。

以上の前提条件の中で、ワンルームや1Kといったコンパクトな区分所有で複数所有するのと、一棟マンションを1棟所有する場合のメリットとデメリットを通して、それぞれの違いについて検証してまいります。

区分所有のメリット

区分所有の1番のメリットは最終的に億を超える規模で投資したい場合でも、金額が小さくはじめられるということです。また、取得時だけでなく、区分で複数所有していれば、まとめて売ってもいいし、都合によりバラバラに1物件毎に売却したり、入れ替えができる、ということです。


また、区分マンションには時価相場が容易に把握しやすい流通市場があり、売買しやすいのも初心者にとっては投資対象といえるでしょう。


さらに、大きなメリットとしては、比較上は上記の前提条件を設定しましたが、一棟のマンション内で複数所有することもできる一方、バラバラに複数所有してポートフォリオを組めますので、エリア、立地、築年等の混在度合いによってリスク分散型の投資をすることができます。


そういう意味では、区分マンションでも1億円を超えるようなタワーマンション上層階のプレミアム住戸に投資する場合は、注意が必要です。


一棟マンション同様にエリアや築年の分散ができませんが、さらに、1住戸のみなので、空室になった際は収入ゼロな上に、高額賃貸物件は次の入居者探しまでに時間を要するケースが多く、その間の資金繰りに苦労したり、景気が悪化した場合の賃料変動も大きいため、大幅な賃料値下げをしないと空室が埋まらない、といった事態が過去に起こっており、区分の複数所有、一棟マンションと比較して、最も空室リスクが高い物件となる懸念があります。

運営収支上では、区分マンションでは通常は修繕積立金を積み立てているので、共有部分の修理や大規模改修があった場合も追加の金額負担等は小さく済みますし、異なるマンションで分際して保有している場合は、同時に修繕が発生するケースが少なく、修繕費用が一時に多額に必要という資金繰りの問題は発生しづらいでしょう。
一方、一棟マンションの場合は、大規模修繕の場合は費用が一度に多額になりますので、取得当初より、オーナー自身で長期修繕計画を作って計画的に事業収支と資金繰りの計画を立てて運用していく必要があります。

区分所有のデメリット

では区分所有のデメリットに関しては何でしょうか。タワーマンションのプレミアム住戸のような物件の空室リスクは前述の通りですが、これ以外にも下記のようなデメリットがあります。

まず、区分の場合は、室内リフォームやリノベーションでも管理組合の承諾が必要ですし、規約や設備の変更、共有部の修繕、大規模修繕の決定をしようにも管理組合による決定によるため、オーナー自身でコントロールすることが出来る範囲はかなり限定されます。

まして、建替えが必要なほど古くなって空室が埋まらない事態になっても、マンションによってはスムーズな建て替え決議ができずに、そうなると売りたくても買い手もつかず身動きが取れない、といった最悪のケースに陥ります。今人気のタワマンでさえ、将来は廃墟と化すのではないか、と言った懸念を主張する専門家もいるくらいです。

売買価格については、流通市場が明確で一定の相場があるのがメリットでしたが、逆に売却時の価格も、同じマンション内の他の部屋と比較されやすく、極端に高く設定しても売れません。

このことは、例えば長期的な不動産市況全体のマクロ景気の変動による比較を考えてみると、一棟マンションは個別的な立地や物件スペック要因とオーナー自身の運用期間中の経営努力によって、高く売れる際には、予想以上に高く売れる可能性もありますが、区分マンションでは、相場全体の変動と、そのマンションの市場価格に左右される部分が大きく、また、一棟マンションほどの振れ幅は少ないのが一般的です。

所有期間中の経営努力で価値を上げて大きなキャピタルゲインを狙いたい人には一棟マンションの方が不動産投資の醍醐味を味わえて、大きなキャピタルゲインを狙える可能性が大きいのではないでしょうか。

一棟マンションのメリット

一時期、タワーマンション上層階が相続対策に有利としてもてはやされた時期がありましたが、国税当局から上層階も眺望メリットを加えたそれなりの時価評価が必要との見解が出されて、ブームは終焉しました。

しかし、相続評価の問題以前に、高額なタワマン投資は前述のとおり空室リスクの幅が大きすぎる、というそもそものデメリットがあります。

これに対して、1~3億円前後で購入できる一棟マンションの中心は、立地さえ間違わなければ、比較的安定した賃料相場で貸しやすい、1ルーム、1Kが十数戸で1棟を構成しているため、タワマンのプレミアム住戸のような高額賃貸にありがちな空室リスクが低く長期安定稼働が見込める、という点が大きなメリットです。

また購入費用をはじめ、修繕やリフォームなど、同じ時期にまとまった費用が必要となる資金繰り上のデメリットはありますが、長期的な事業収支、資金計画をきちんと立てて運用すれば、順調に回ってきた時には、同じ立地であれば、取得時の投資利回りが区分マンションよりも比較的高い傾向にあるため、運用収支の手残りも多くできるケースが多いと言えます。(運用収益の多寡は取得時の価格に対する投資利回りと実際の稼働率次第であり、区分か一棟かで単純にどちらが有利と言うことではありません。)

また、敷地の土地価格の変動も、持ち分面積が少ない区分マンションよりも、市場変動の影響を大きく受けるため、長期的に経済がインフレ傾向にあるとすれば、土地の所有面積が少ない区分所有マンションよりも最終的には大きなキャピタルゲインを得られる可能性が高いと言えます。逆にバブル崩壊のようなケースでは土地の値下がりリスクが大きくなります。

一棟マンションのデメリット

一棟マンションのデメリットは、やはり1棟の総投資額が大きいため、区分マンションを複数所有するリスク分散投資がしづらく、無理をすると一棟の失敗が一生の不覚につながりかねない、という点です。

そもそも、区分マンションを複数購入して1億円くらいが総投資額の限界、という方が、無理なローンを組んで高額な1棟マンションに投資するのは破産覚悟の大バクチ、になってしまう懸念があります。

やはり数億円規模の一棟マンションに投資できる方というのは、総資産にかなりの余裕がある方で、場合によっては、一棟マンションを複数所有する資産背景があるような方に向いている投資対象であり、一般のサラリーマン投資家では投資しづらい、という点があげられますが、正確に言えば、これをもってデメリットというべきものではないと思います。

むしろ、一棟マンションのデメリットは、物件の個別性が高く、区分マンションのような明確な価格の基準がわかりづらく、また、様々な要因によって価格が形成されるため、不動産投資の知識が少ない人にとっては、妥当な価格の見極めが難しい、という点でしょう。

重要事項は取得時に説明は受けられますが、明確に価格にしたらいくら、ということがわかりづらいリスク要因がいくつかあり、この見極めを誤ると、プロ業者でも、一見割安に見えても実は割高だった、というケースも少なくありません。

つまり、市場価格や比較対象が豊富な区分マンションよりも、深い専門知識と高い物件選定眼が必要ということです。

何が正解なのか?

以上の点を踏まえた上で、複数区分を持つか、一棟マンションを持つか、タワーマンションの上層部を持つか、という中では、果たして、どの選択肢が正解なのでしょうか。

区分所有マンションを複数購入するよりも、タワーマンションの上層階や一棟マンションであれば購入や売却の手間は1回限りですみますが、単純にそういうことだけで選べないのが不動産投資の本質です。

例えば、銀行が時価の7割まで融資してくれる、という金融市況の場合、金融資産を5000万円持っている方は、よほどのバクチ好きでなければ、全額を不動産投資には回せないでしょう。仮に3000万円を不動産投資に回してみたい、と考えた場合に、銀行ローンでレバレッジを利かせれば1億円まで物件を取得できますが、1億円の総投資額でリスク分散を優先したければ、一棟マンションは無理となります。

結局は、総投資額はどのくらいなのか、失敗した時のリスクをどう考えるか、どこまでのリスクテイクができるのか、したいのか、という投資スタンス次第です。

仮に相続対策だとしても、最終的には不動産投資として自分にマッチした投資かどうか、で見極める必要があるのが不動産投資なのです。

まとめ

ここまで各投資対象の特徴を読まれた方は、最終的な選択は、どれが絶対的に正しい、ということではなく、投資する人自身が、どのような投資スタンスであるかによって、選ぶべき対象が変わってくる、ということがおわかり頂けたかと思います。

ネット上には、自社の商品を売りたいがために、自社の扱っていない種類の不動産を、何の前提条件も置かずに、表面的で歪曲化したメリット、デメリットのみを並べて、あたかも、絶対的な優位性がある投資対象はこれだ、的に書いてある記事をみかけるケースもありますが、市場価格の決まっている株とかと違って、個別要因が多いというのが不動産の特徴ですから、一般的なメリット、デメリットを理解した上で、さらに物件毎に細かく、いい点、悪い点を調査、把握し、自分のニーズに合っているかどうかを冷静に見極める必要があります。

この記事を書いた人

C+One 編集部
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