2022年07月19日

コロナ禍が不動産市場に与える影響は?東京の地価、五年間の変化

新型コロナは不動産市場にどのような影響を与えているのでしょうか?
2020年より続くコロナ禍は日本経済への影響も大きく、不動産の価格に反映される地価にも大きな影響を与えると考えられます。そこで、コロナ禍を含むこの5年間、東京の地価がどのように変動しているのかを確認しました。

 

不動産の価格は大きく「土地」と「建物」に分けられます。一般的に建物は経年に伴い価値が下がる傾向にありますが、それに対して、土地の価値は立地や経済状況の影響によって上下変動するすることが多く、近年では上がる傾向にあります。

新型コロナの感染拡大によるコロナ禍は経済状況への影響も大きく、同様に地価変動にも大きな影響を与えると考えられますが、コロナ禍を含むこの5年間、東京の地価はどのように変化しているのでしょうか?

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東京都の地価の推移

国土交通省が発表している地価公示情報によると、2022年東京の全体土地の平均金額は1,132,842 円となり、5年前2018年の1,032,926 円に比べ、9.67%上昇しました。土地用途で分けてみますと、総面積が少なく希少性の高い商業用地の平均金額は2,562,637円で東京の全体平均金額と住宅用地の437,734円を大幅に超えています。

東京全体の平均地価と同じように、2018年の土地用途別の地価と比較すると、商業用地の地価は過去5年間で9.46%増加し、住宅用地の地価も9.78%増えました。


  2018年 2022年 増加率
東京全体の地価 1,032,926 円/㎡ 1,132,842 円/㎡ 9.67%上昇
商業用地の地価 2,341,206円/㎡ 2,562,637円/㎡ 9.46%上昇
住宅用地の地価 398,736円/㎡ 437,734円/㎡ 9.78%上昇

 

続いて、2018年から2022年まで毎年の変化を見てみましょう。

商業用地の地価は、2018年から2020年までに毎年6% 以上増加していました。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で、2021年からマイナスに落ち込み、2020年の6.48%から2021年の-3.18%の減少に転じました。2022年も引き続き増減率はマイナスで、下げ率は減ったものの2021年比-1.07%に留まり、過去5年間の最高地価である2020年までは回復できずにいます。

住宅用地の地価についても商業用地と同じ傾向があり、2018年から2020年まで徐々に増加していましたが、コロナ禍に入った2021年に成長率がマイナスの-0.06%に転落。しかし下降傾向は長くは続かず、2022年には増加率がプラスの1.32%となり、5年間で一番高い地価を記録しています。


記事_東京地価_商業用地の地価18-22ーG01   記事_東京地価_住宅用地の地価18-22ーG01


東京23区の地価の推移

次に、東京23区内の各区別に、2018年~2022年の5年間における商業用地と住宅用地の地価推移と増減率について分析します。

まず、下記の表に土地用途別の平均金額の東京23区ランキングを示します。
2022年の商業用地の平均地価で高額上位3位の区は1位中央区 (9,034,509円)、2位渋谷区(7,078,182円)、3位千代田区(6,274,774円)で、住宅用地の平均地価で高額上位3位の区は1位千代田区 (2,704,286円)、2位港区(2,076,667円)、3位渋谷区(1,334,923円)となりました。

また、23区の区別の変動率をみると、商業用地は千代田区以外全部プラスの変動値で、墨田区では5年間で23.78%という高い上昇率を記録しています。住宅用地も好調で変動率は全部プラスの変動で、荒川区は19.85%の変動率を記録しています。

東京23区商業用地平均地価  東京23区住宅用地平均地価


続いて、2年間のコロナ禍の影響を含め、過去5年間における東京23区の商業用地と住宅用地の地価変動の詳細データを見てみましょう。

東京23区の各区における商業用地の地価について、地価トップになる中央区はコロナ禍までは年々増加の傾向でしたが、2021年から大きく下落し、5年間の変動率で言うとほぼ横ばいの0.27%となっております。地価3位の千代田区もコロナ禍の影響を大きく受け、5年間の変動率では東京23区で唯一マイナス増加率の-2.7%となりました。それでも、この2つの区を除く21区では変動率プラス9%を超え、港区、台東区、中野区、北区、江東区、荒川区、墨田区の7つの区では増加率がプラス20%を超えるなど、多くの区で5年前の地価水準を超えています。

 

東京23区商業用地の地価ランキング


住宅用地では商業用地と同じくコロナ禍の影響を受けたものの、5年間の変動率で見ると東京23区全てがプラスとなりました。また、千代田区を除く全ての区で2022年にはコロナ禍前(2020年)の地価を超えています。

東京23区住宅用地の地価ランキング

まとめ

新型コロナ禍前、東京の地価は年々上昇の傾向が続き、2020年には商業用地の平均金額は2,675,373円に上り、住宅用地も432,322円に達しました。その後、コロナ禍の影響で2021年の平均金額は商業用地、住宅用地ともに下がったものの、住宅用地の回復は早く、2022年にはコロナ禍前の水準に戻っています。商業用地については住宅用地ほどではないものの堅調に回復しており、同様にコロナ禍前の水準を取り戻すと考えられます。

東京23区の区別に見ると、商業用地は千代田区・中央区とそれ以外ではコロナ禍からの回復傾向に違いがみられ、回復が遅れている両区を除くと、全ての区で過去5年間で9%以上の地価上昇がみられます。住宅用地についても、千代田区を除く全ての区でコロナ禍以前の水準に回復し、7割の区で過去5年間で地価上昇率10%以上を記録しています。

地価の推移から見ると新型コロナウイルスの流行によるコロナ禍の影響は脱したようにも見えますが、変異型の発生や国内外での人流の増加による新たな流行など懸念も多く、引き続き注視していく必要があると考えます。

※出典:上記の表と図は全て国土交通省の「国土数値情報(地価データ)」から加工して作成したものです。