投稿日:2023年02月03日 更新日:2023年12月08日

2023年問題とは? コロナ禍を振り返り現役設計士が見る不動産市況

カテゴリ設計

2020年に国内では初の感染者が確認され、またたく間に流行した新型コロナウイルス感染症。緊急事態宣言が発動されるなど2021年、2022年とその後も様々な業界で感染拡大における影響は続き、コロナショックという形で世界的に株価も暴落した。

 

一方、生きていく上でなくてはならない不動産。そのためか新型コロナウイルスによる不動産市況への影響は限定的という見方が多いようだ。コロナ禍での不動産市況は様々な記事で紹介されているが、現場での体感としてはどうなのか。

設計士イメージ

不動産における「2023年問題」

「コロナ禍はレジが多い。オフィスや商業ビルは減少しましたね」
普段は商業ビルを中心にデベロッパーから多く設計を受注している一級建築士のN氏はこう振り返る。

コロナ禍で一気に浸透したテレワーク。出社率が大幅に減り、働き方の多様化を受けた企業はオフィス床面積を抑えることとなった。

このオフィス縮小はもともと大規模再開発でオフィス床が大量に供給される状況に拍車をかけることとなり、いわゆる「2023年問題」と呼ばれるオフィス過剰問題につながっている。

コロナで変わるテナント需要

商業ビルにおいてはもう少し複雑なようだ。
例えばコロナ禍で飲食業に関しては出店を控える動きがあった反面、物販や小売業、美容系のニーズは上昇し、いわゆるサービス業では問い合わせ数が増えるなど多様な動きを見せている。2021年にリーシングの担当者に話を聞いた際は「美容・ヘルスケア系」「個室サウナ」「シミュレーションゴルフ」の需要が増えたとのことだった。

しかし設計に関して言えば建築価格の高騰が直に影響を及ぼしているようだ。
「建築費の内訳としては材料費、それに運搬費が特に高い。不動産投資をする個人のオーナー様としては建て控えをしているようです。」N氏は商業ビル減少の要因をこう説明する。

世帯数の減少

不動産業界に「2023年問題」と呼ばれる問題はもう一つある。
それが「世帯数の減少」だ。
日本は既に人口が減少し始めているが、今までは人口減少とは反対に世帯数は増加傾向にあった。それがついに2023年ころをピークに減少に向かうとされているのだ。
元となった国立社会保障・人口問題研究所によると下記のように示されている。

 

「2023年に5,419万世帯でピークを迎え、その後は減少に展示、2040年には5,076万世帯まで減る」

参考:国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)

 

世帯数が減少するとなると懸念されるのは空室の増加だ。

N氏によると「実際、都内のワンルームは空室が増えてきています」とのこと。

もともと「ワンルーム規制条例」により東京都の多くの区で最低床面積が25㎡とされて以降、首都圏エリアでは25㎡のワンルームが大量に供給されることとなった。

そこにコロナでオンライン授業やオンラインワークが広がり学生や単身赴任者が都心に流れず地方のままでも行動できるようになった。さらに外国人の入居者が減少することとなったため25㎡のワンルームマンションの余剰を生み出すこととなったというわけだ。

 

しかし一方で「20㎡や30㎡のマンションは増えている」という。

それには単純に今まで供給数が少なかったという理由と、コロナで外出自粛やテレワークの動きが広まり自宅にいることが長くなった入居者が住環境を重視するようになったという可能性が考えられる。

 

そして今また少しずつ都心回帰の動きが戻ってきている。

2022年10月頃、水際対策が緩和され以降海外からの入国者がまた増えてきたことに加え、ワクチン接種などの普及で経済活動が正常化してきているからだ。

 

今後も世の中の動向にあわせ変動していくと考えられる不動産市況を注意深く見定めていきたい。