2019年07月18日

不動産投資の失敗と成功 3つのパターン

不動産投資は株式投資やFX等と比較するとミドルリスクの投資だと言われていますが、それでもやはり失敗するリスクはあります。とくに初期投資の金額が大きいだけに、成功したときのリターンだけではなく、失敗したときの損害も大きくなるため注意が必要です。

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投資家が不動産投資に失敗する3つのパターン

ケース1:節税のためタワーマンション高層階を購入

相続対策のため、タワーマンションの高層階を区分購入。
土地・建物ともに市場価格よりも相続税評価額が低く抑えられるため、節税効果が高いと言われているタワーマンションの高層階。セミナーや雑誌記事でも話題になりました。相続税対策として購入したものの、購入後すぐに相続が発生してしまいまいした。その結果、税務署から租税回避行為とみなされ、修正申告をすることに。市場価格による評価での追徴課税をされてしまった。

 

【ポイント】
相続のタイミングに“想定外”が生じたことで節税という目的が果たせず、不動産投資が失敗してしまったケースです。ロングスパンでどのような潜在リスクがあるかをしっかり考えること、相続税対策は早い段階からの対策がポイントになることを意識して、計画を立てることが必要です。

 

また、相続税というのは、相続が発生した時点の税法が適用されるのが今の法律なので、必ずしも「絶対に有効」というものは確定的には存在しない、といった、基本的なこと、税法の本質的な考え方は勉強しておく必要もあります。そうした点を理解しておけば、専門家を語りながら脱税指南っぽい方法を勧めたりするような相手なのか、本当に信頼できる専門家なのかを見抜くこともできるようになります。

ケース2:利回り追求で郊外の中古物件を購入

賃料収入を目的に利回りの高い物件がほしいと、郊外の中古(築古)物件を購入。

当初は高いキャッシュ・フローを得られていたものの、築年数が進むにつれて古い建物・設備が賃貸の需要に合わず空室が増えて賃料もダウン。退去時の原状回復費用や広告費など空室募集の費用が収益を圧迫する中、雨漏りなどの突発的な修繕も発生し、収支バランスが危機的に…。売却を考えるものの、希望の価格では買い手もつかず、投資のための物件が「負の資産」になってしまった。

 

【ポイント】
郊外物件の場合、将来にわたってニーズが高いと見込めるエリアで物件を選ぶのが鉄則。その上で、経年劣化で物件の付加価値が下がった時の対策を考えておくことが必要です。新築でしたら、修繕積立金などである程度長期的なプランで考えることができますが、築年数が進んだ中古物件の場合、物件の状況によってはすぐ修繕を行う必要があることも。不動産経営では、大規模修繕はもちろん、設備の入れ替えやリノベーションなどを適時行い、出口を踏まえた長期的な収支計画を立てておくことは不可欠。ツメが甘いと大きな負債を残すことに。

 

特に中古建物は「どこが、いつ修繕が必要で、いくら費用がかかりそうか」、という重要なことが、プロ業者であっても、その専門業務に携わっている人でないとなかなか正確には予想しづらい、極めて専門的なノウハウが必要な部分です。売主サイドは「重要事項」で説明義務があることは開示してくれますが、将来の修繕費用がいくら必要かを見積もるのは、買主側の判断です。そうした点を十分に理解せずに、取得時の利回りだけで投資判断すると失敗します。
 
やはり、住宅に限らず様々な中古物件を取得する際には、中古住宅において最近重視され始めている「インスペクション」という視点から、専門家のチェックを受けるといった慎重な姿勢が同様に大事ですが、中古住宅以外の投資用不動産の世界では「非公開でこっそり売却してる掘り出し物ですから、早く買わないと誰かに買われちゃいますよ」といって仲介業者から煽られてしまうため、一見魅力的な物件ほど、こうしたチェックの時間を十分に取りづらいのも今の日本の不動産市場の実態です。こういう際には、やはり相談をしやすい信用信頼できるビル管理会社等の専門業者と日頃から付き合いがあると助かるでしょう。
 
「新築は開発業者の利益が乗っているから利回りが低くて不利、買うなら利回りの高い中古」といった、「中古物件を売りたい業者の売り文句」だけを信じていては失敗してしまうのが不動産投資なのです。
 
投資用不動産の世界では、同じプロ業者同士でも、新築でも中古でも売買取引が行われており、「新築は利回りが低くて儲からないから投資対象として中古の方が有利」ということはありません。それぞれ、メリットとデメリットがあり、それを十分理解しているプロ業者は投資目的に応じて、物件を取捨選択しています。
不動産投資においては、多くの一般投資家の皆さんは、プロ業者のように何度も売買を繰り返したり、多くの物件を保有したり、といったことが難しいので、経験に基づくノウハウが不足するというハンデを負っています。そのことをまず自覚して、ネットに氾濫する、前提条件が甘い、あるいは不明確な意見をそのまま鵜呑みにすることなく、「腕のいいプロ業者の目線の本質はどこにあるか」を自分で勉強し研究する、といった姿勢も大切です。

ケース3:アパートローンをフル活用して不動産投資を開始

賃料収入と資産形成のため、木造新築アパートを購入。
サラリーマン属性の方が不動産会社の勧めるアパートローンを利用して、フルローンに近い形で購入しました。比較的賃貸付けがしやすいと言われる新築のワンルームタイプを選び、本業があるためあまり手が掛けられないことから、サブリースも組み込んでいます。投資を始めて日が浅い頃は運用に手がかからず安定したキャッシュ・フローを維持しましたが、更新時の条件交渉がうまくいかずサブリース契約を解除。最寄駅からバス便の立地や構造での競争力が低い物件だったため賃貸の需要が伸びず、空室増加や賃料下落により融資返済が滞る結果に。

 

【ポイント】
不動産管理会社やサブリース会社が物件を一括で借り上げ、リース料を大家に支払うシステム「サブリース」。大家さんにとって「空室でも家賃が保証される」点は非常に魅力ですが、当初の設定賃料が続くわけではなく、更新時に大幅な保証金額の値下げを要求され、場合によっては融資の返済金額を下回るリスクも。当初の家賃設定がいつまでも続くと思わず、自身の実資力で返済可能なローンを組むことをベースに考えるべきでしょう。また、業者に全てを任せてしまうのではなく、自身でも勉強をして賃貸経営に関するノウハウを身に着けておくことも重要です。


失敗パターンに共通するのは「長期視点」の欠如と「知識・ノウハウ不足」

同じ「投資」でも、株式投資やFXなど金融商品への投資と不動産投資には大きな違いがあります。それは不動産投資には「事業経営」の要素が含まれていること。つまり投資を行う“目的”を達成するために継続的・計画的に考え、工夫を凝らして運営することが必要なのです。

 

現代の不動産は、金融商品のように時事刻々とその価値が変わるものではないため、短いスパンで売買して収益が上がることはめったにありません。そして、マンションやアパートなどのオーナーとなり「事業」として家賃収入(インカムゲイン)を得る場合は、いかに長く安定して収益を上げ続けるか、という点が重要です。

 

今回ご紹介した3つの事例に共通しているのは、目先のキャッシュ・フローや収益に捉われて短絡的な決断をしてしまっている、という点。相続時期の見誤り、近視眼的な利回りへの固執、収支計画の甘さなどは、すべて長期的な視点で事業経営を考えなかったことが要因だと考えられます。


大切なのは、少なくとも10年単位で収支計画を立てること。融資の返済だけではなく、メンテナンス費、光熱費、管理費、固定資産税などの税金、空室期間中の損益、大規模修繕費など、不動産投資では収益から支払わなければいけないさまざまな経費があります。これらを計算に入れて収益を継続的に挙げられるかどうかがポイントになるのです。また、子どもの高校や大学への進学、親の介護や相続、自身の退職などプライベートのライフイベントなどを考慮しておくことも不可欠。長期視点で現実的な収支計画を立てることが、失敗を避けるための大前提となります。

一方、「知識・ノウハウ不足」については、やはり、「知っていれば避けることができた致命的な失敗」をしてしまうようなケースや、プロ業者に依頼すると費用がかかるからと自分で全部やろうとしてもノウハウ不足で上手くできていない、あるいは選んだ業者のレベルが低くて、良いパフォーマンスを出せていない、といったケースです。

不動産投資は、金融商品のようにいつ買って、いつ売るか、といった売買タイミングによる投資判断以外に、保有管理している間の運用パフォーマンスが重要であり、その点において、投資家自身の勉強と同時に、いい専門業者のサポートを得ているかどうか、も成功、失敗を大きく左右する要因と言えるでしょう。

不動産投資の成功に学ぶ3つのパターン

次に不動産投資に成功した人は、どのような投資を行なっているのでしょうか。リスクの考え方、長期計画を立てる上でのヒント、物件の選び方など、具体的な実例から紐解いてみましょう。

ケース1:立地にこだわって選んだ新築マンションで満室経営

相続対策として、地元の新築RC一棟マンションを購入。

ターミナル駅から徒歩5分という立地の良さと、同様の物件について複数実績のある販売元への信頼感が決め手になり、不動産投資をスタートした。物件に不具合もなく満室経営が続いており、安定した家賃収入を得られている。節税対策の備えもでき、安心できている。

 

【ポイント】
賃貸住宅の需要や相続税評価額を考慮し、駅からどのくらい離れる場所なのかを精査したことが成功のポイントに。信頼できる会社が売主となっている物件を選んだことと、新築RCマンションのメリットである、ある程度の期間建物のメンテナンスに手間とコストをかけずにすむ点も経営面で大きな安心材料となっています。

ケース2:投資目的を明確にすることでリスクを回避

資産形成として、駅から近い好立地の築浅RC一棟マンションを購入。
物件選定時に、キャッシュ・フローや利回りの高さではなく、「長期的に安定して資産運用ができること」を投資の目的として明確化。安易にサブリース物件を選ばず、「立地」「建物」の質を最優先して築浅の中古物件を選択しました。結果、訴訟問題にまで発展したシェアハウスのサブリース家賃不払い問題にも影響を受けず、安定した満室経営が実現できている。


【ポイント】
表面的な利回りの高さだけに目を向けず、利便性を重視した立地選び、メンテナンス費などを考慮した信頼性のある建物選びによって、長期的な賃貸需要が期待できる(つまりサブリースがなくても高稼働)、当分は修繕費等の追加投資もあまりかからずに安定的に永く運用を続けられる物件、つまりは資産価値が下がりにくい物件を見極めたという好事例。

 

利回りは一般的にリスクと比例することが多いため、高利回り=割安に見える物件でもよく見ると割高だったりするので、どんなリスクが潜んでいるかを見抜くことが大切です。
 
一方、低利回り物件の場合は、単に割高な値付けなのか、好立地だったり築年が浅かったりという合理的な理由で妥当な価格なのかを見極めたうえで、価格に妥当性があるのであれば、例えば、相続対策や長期間のインフレヘッジのような投資目的、投資スタンスにはむしろ高利回り物件よりも適している、といった投資判断につながります。
このように、表面的な利回りの高低だけをみて良い悪い、という短絡的判断ではなく、その物件固有のリスク要因や周辺相場からトータルに分析した上で、その物件が自分の投資目的に適しているかどうかという視点で選ぶ、ということが成功への鍵となるはずです。

ケース3:相続物件をリノベしてから売却。期待以上の売値を実現

親から相続した都内のビルを保有。
当初は売却で現金化して財産分与する計画だったが、低稼働状態のため安値でしか買い手がつかなかった。そこで一旦売却を中止し、バリューアップに強い管理会社に委託。部分的にリノベーションを行うことで中古物件の高稼働化を実現。満室経営の状態で売却することで、期待以上の売値を実現した。

 

【ポイント】
低価格のまま稼働率の悪い中古物件として急ぎ売りをするのではなく、一時的に時間とコストをかけてでも満室稼働状態に変えてから売却したことが成功のポイントに。ただし、リノベーションのように一定の費用と時間がかかる対策を取るのはなかなか覚悟と度胸が必要なことも事実です。売却するタイミングとその建物の経年劣化の程度や、時代のニーズに合わない陳腐化の程度、といったことをトータルに判断して、単にエイヤッと根拠のない度胸だけでやるのでなく、合理的な調査分析に基づいて実行して初めて成功する確率が高くなる、ということだと思います。

成功パターンに共通するのは、「入居者視点」での付加価値づくり

不動産投資が「事業経営」という要素を持つ以上、そこには「顧客」がいます。「顧客」に選ばれる付加価値を提供することではじめて、収益を上げることができるのです。不動産経営においての「顧客」は、入居者。つまり入居者に「住みたい」と思ってもらうことが、空室リスクを下げ、家賃収入を得るためのベースになるのです。

 

ご紹介した3つの事例に共通しているのは、入居者が物件選びで重視することは何かを正しく理解している点だと言えるでしょう。入居者にとってマンション・アパート選びは日々の暮らしそのものを決める重要な決断です。毎日の通勤・通学の利便性、買い物施設や教育環境など生活環境はもちろん、しっかりした建物で安心感と快適性が担保されていること、水まわり設備が使いやすいこと、日当たりや防犯面での配慮があることなどは、入居者にとって大きな付加価値になります。ケース3のようにテナントビルの場合も同様です。

この記事を書いた人

C+One 編集部
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