2019年07月02日

目的・資産額別に見る 「資産運用の始め方」

「人生100年時代」が現実のものになりつつある今、不安なのは老後の生活費。少子高齢化が進みつつある中、「年金をいつから・どのくらい受取ることができるのか」と将来の年金制度に不安を感じている人も多いのではないでしょうか。

資産運用

老後の生活費を自助努力で増やすといっても、ただ積立や貯金をしておけば安泰な時代は終わりました。大切なのは、“貯める”のではなく、生涯収入を“増やす”こと。
今回は、資産を活用して生涯収入を増やす「資産運用」について、基本的な考え方やどのような方法を選ぶべきかについてご紹介します。

1) 今の時代、なぜ資産運用が必要なのか?

貯蓄ではお金は増えない時代。

かつて銀行や郵便局にお金を預けると、高金利のおかげで「増える」ことが当たり前の時代がありました。
バブル期を含めた高度経済成長時代の預貯金の金利は、今とは比べものにならないくらい高く、1974年の普通預金の金利は3.0%、1991年の定期預金の金利はなんと5.0%。現在(2019年5月)の都市銀行の普通預金の金利0.001%と比べると、いかに利回りがよかったかイメージできるのではないでしょうか。
バブル期の郵便局の定額預金の金利は8%もあり、この利率で10年預ければ資産が2倍に増えると言われています。

バブル経済崩壊後、低金利時代へ。

国内景気のよいときはモノがよく売れ、企業は原料購入や設備投資により多くの資金を必要とするため、お金の需要が高まり金利は上がります。逆に、景気が減速すると資金調達のニーズが低くなるため、金利は下がります。
バブル経済が崩壊した後、日本の景気はマイナス成長となりました。その結果、金利は下がり日銀はゼロ金利政策を余儀なくされたのです。
さらに景気回復を目的として、2016年1月にはマイナス金利政策の導入を決定。金利を引き下げることで世の中で使われるお金の量を増やし、投資や消費が活性化することを目的として行われました。

金利が下がれば金融機関に預けている預貯金に利子がほとんどつかなくなり、増えなくなります。つまり資産を「持っているだけ」だと、宝の持ち腐れといっても過言ではないのです。

人生100年時代に備えるため。

厚生労働省の調査によると2010年の日本人の平均寿命は、女性86.3歳、男性79.6歳。そして2015年には女性87.1歳、男性80.3歳に伸びました。このペースで行くと、2060年の平均寿命は女性90.9歳、男性84.2歳になると言われており、「人生100年」は現実のものとなりつつあります。

(参考)

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/chiiki-gyousei_03_02.pdf

https://www8.cao.go.jp/kourei/kou-kei/24forum/pdf/tokyo-s3-2.pdf

しかし、長生きがもたらすのはメリットだけではありません。定年退職後の暮らしが長くなる分、生活費などの経済的負担もボリュームアップ。これまでと同じような退職金や貯蓄だけでは、十分な備えだと言えなくなってきたのです。「うちは大丈夫」と思っている人も、病気で入院したり、体が不自由になったりといった想定外のアクシデントによって、医療費や住まいのリフォーム費用などの大型出費が突然発生する可能性もあるのです。

「長生きリスク」「老後破綻」といった言葉が、雑誌や新聞などで取り上げられることも増えています。現役時代の賃金の積立によって老後に備えるのではなく、現役時代の収入を投資して増やすという考え方が欠かせない時代になっていると言えるでしょう。

2) これだけは知っておきたい!資産運用の基礎知識

資産運用の第一歩、「目的別に資金を分ける」。

資産運用とは、「自分が持っている資産を増やす、あるいはもしくは減らさないことを目的として、投資や貯蓄を行うこと」を意味します。つまり、資産が殖えるようにうまく管理・運用を行うことなのです。

管理するために必要なのは、まずは目的に応じて資金を分類すること。例えば手元にある金融資産すべてを一気に貯蓄してしまっては、今すぐ必要な生活費の支払いに支障をきたします。同様に、すべてを投資に回してしまうと投資の種類によっては元本割れを起こして資産を大きく目減りさせてしまうことにもつながりかねません。今すぐ使うお金、貯めておくお金、運用して増やすお金など、目的別に資金をバランスよく分類することが大切なのです。

今すぐ使うお金「流動性資金」

生活費などの日常生活で必要な資金。急な出費の際にも引き出せるように、銀行・郵便局などの普通預貯金などで持っておくのがベターです。

長期的に貯めるお金「安定性資金」

住まいの購入・リフォーム費用、子ども・孫の教育費など将来見込まれる大型出費のために貯めておく資金。安定的に管理できる定期預貯金や個人向け国債などの債権で持つのがよいでしょう。

活用して増やすお金「収益性資金」

さしあたり使う予定のない余裕資金で、多少のリスクなどを考慮しても資産を増やすために運用してもよいと思われるお金。投資信託や株式といった金融商品や不動産などをリスク・リターン・利回りを考慮して選ぶことが必要です。

リスクとリターンとは?

資産のうち、投資にまわす資金が明確になれば、次はどのような方法で投資を行うかを考えなくてはいけません。そのために知っておくべきは、「リスク」と「リターン」の関係性。投資における「リスク」は、「結果が不確実であること」を指します。つまり、投資した金額に対して得られる利益の振れ幅が広いほど、リスクが高いということ。
リスクの高い金融商品の場合、短期間で大きな利益(リターン)を得られることもあれば、投資額よりも大きな損失が出て元本割れを起こしてしまうこともあります。逆にリスクの低い金融商品の場合は大きな損失を出すことは少ないですが、その分得られるリターンも小さくなります。
投資をする際は、この「リスクとリターンの関係」をベースに、自分の状況や目的に応じて投資の方法を考えることが必要です。

どのようなリスクがあるの?

利益を変動させるリスク要因にはどのようなものがあるのでしょうか。リスクの種類を知ることで、資産運用において投資方法を選ぶためのヒントが得られます。

価格変動リスク

購入した価格よりも、売却時の価格が値上がりするか値下がりするかが確実でないこと。とくに株式・投資信託、債権などは市場の変化などに大きく影響されるため、市場価格(時価)により売却時の価格が大きく変動することを覚えておく必要があります。

金利変動リスク

金利の変動により資産の価値が変動する可能性のことを指します。金利変動による影響は、預貯金や住宅ローンの金利はもちろん、金融商品においては債権がもっとも大きいと言われています。
満期前に市場で時価取引する際には注意が必要です。

為替変動リスク

円と外国の為替相場の変動により、外貨で所有している資産の価値が変動する可能性のことを指します。
国ごとに貨幣の価値は異なり、経済成長率、インフレ率、国際収支などをベースに投資家が経済成長に期待できそうな国に対して投資をします。
多くの人から投資を受けた国の貨幣価値は上昇し、そうでない国の貨幣価値は下落します。外国債権や外国株式などがとくに大きな影響を受けると言われています。

信用リスク

有価証券を発行する側(国や企業など)が破綻することで債権不履行に陥る可能性のことを指します。債権不履行とは、利息や元本などあらかじめ決められた条件で支払えなくなること。
国債・地方債・政府保証債などの公共債は信用リスクは低いと言われていますが、社債や金融債といった民開催、企業が発行する株式などは信用リスクは高め。発行元の情報を精査して検討する必要があります。

カントリーリスク

投資している国や地域で政治・経済の状況が変化し、為替市場や証券市場に混乱が生じることで、その国に投資した資産の価値が変動する可能性を指します。
国債は一般的にはリスクが低いとされていますが、国・地域によっては経済危機に陥るケースもあるため注意が必要です。

3) 選ぶべき資産運用の種類:目的編

目的に合わせて投資方法を選ぶ。

資産を分類して投資にまわす資金が明確になり、リスクとリターンの関係を理解したら、いよいよ資産運用の「方法」を考えるステップです。意識しておきたいのが、どのような目的で資産運用したいのかを考えること。
単に「資産を増やしたい」ではなく、「長期的にじっくり増やしたい」「リスクが高くても短期間で増やしたい」「できるだけ日々の手間・煩わしさを省きたい」など、必要な条件を洗い出すことで自分の目的に合った投資方法を選ぶことができます。

目的1:初心者でもわかりやすい金融商品で投資を始めたい。

「投資を始めてみたい」「少額から少しずつ増やしたい」といった投資初心者におすすめなのが、インデックス運用。例えば日本株で運用する投資信託の場合、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)を目安の指数(ベンチマーク)にします。それらのベンチマークと連動した値動きをするように運用する方法をインデックス型投資信託と言います。
仕組みがわかりやすいため、初心者におすすめの方法だと言えるでしょう。

目的2:低リスクで運用して将来に備えたい。

「投資はしたいけれど、元本割れなどのリスクは避けたい」などリスク回避を重視するタイプには、バランス型運用がおすすめ。バランス型運用とは、値動きの異なる商品に分散して投資することで、特定の要因によるダメージを最小限に抑えて安定した運用を目指すものです。
例えば、国内株式・海外株式・国内債権・海外債権などに分散した投資信託などが考えられます。

目的3:高リスクでも高いリターンを狙いたい。

「学習した金融・経済の知識を実際の投資で活かしたい」「資金に余裕がある」など、リスクによる損害が許容できる場合は、国内外の株式で値上がり益を追求するファンドで運用するのが良いでしょう。
具体的には株式投資、投資信託などが考えられます。

目的4:低いリスクで堅実に増やしたい

「子どもの教育費として使いたい」「マイホーム購入時の頭金に使いたい」など目的・時期・金額が決まっている投資の場合、元本割れのリスクを極力抑えて運用することが大切です。
預貯金よりは利回りのよい方法でかつリスクを抑えて運用するなら、公社債比率の高い投資信託で運用するのがおすすめです。国内債権等が中心の投資信託なら、利益は小さくなりますがその分安定した運用をすることが可能です。

4) 選ぶべき資産運用の種類:資産額編

資産額に合わせて投資方法を選ぶ。

資産運用の方法を検討する際は「どのくらいの資産を元手にするのか」も考慮する必要があります。
同じ投資方法であっても投資額によっては思い通りのリターンが得られない場合もありますし、場合によっては別の投資方法を選んだ方が効率的に増やせるという場合もあるからです。
また投資に充てる期間もリスク・リターンに大きく影響する要素。資産運用にまわす資金別・年代別におすすめの投資方法をご紹介しましょう。

タイプ1:資産額1,000万円以下の場合(20代・30代向け)

20〜30代は、住宅資金・教育資金・老後資金といった「人生の三大資金」にこれから直面する世代。
まとまった資金はありませんが、投資に充てる期間は十分にあるため、コツコツと増やしていく積立がおすすめです。利息を元本に含めてさらに利息が計算される“複利”で積み立てることで、運用期間を長くするほど資産形成を効率的に進められます。

タイプ2:資金額1,000万円〜1億円の場合(40代・50代向け)

40〜50代は住宅購入、子どもの進学、親の介護などライフイベントでのコストがもっともかかる時期。
しかし退職までの時間がまだ確保できるため、それまでに形成してきた資産と今後見込める収入を活かして運用することで、十分な老後資金を形成することが可能です。
大切なのは、現在の支出と退職後の支出のバランスを考えて投資を行うこと。資産形成が順調であれば、積極運用資産を減らして、安定運用資産にまわすと安心です。

タイプ3:資産額1億円以上の場合(60代以降)

退職金の受け取りなどにより、保有資産額がピークを迎える60代以降。
年金が主な収入になりますが、老後にゆとりある暮らしを送るためにも保有資産を守りながら、低いリスクで運用することが大切です。年代に応じてリターンの目標は変化するため、その時々で目標に合わせた運用方法に見直すようにしましょう。60代以降はとくに安定性を重視した運用へと変えることをおすすめします。

1億円以上の資産運用には不動産投資が良い!?

資産を“増やす”ための投資として金融商品を中心にご紹介しましたが、実は資産運用に有効な手段は金融商品だけではありません。投資の手段として有効なものの一つが「不動産投資」。
不動産投資には、建物の売買を行なって利益を得る「キャピタルゲイン」、マンションやアパートなどのオーナーとなり家賃収入を得る「インカムゲイン」などの投資があります。中でも、後者の賃貸マンション・アパートで家賃収入を得る大家業は「ミドルリスク・ミドル&ロングリターン」の手堅い投資だと言われています。

賃貸マンション・アパートを建築したり購入したりするためにまとまった元手が必要となりますが、比較的安定して長期的に家賃収入を得られることで、私立年金としても活用することが可能。
さらに固定資産税、相続税、所得税などの節税も可能となり、資産運用の面で賢い選択肢として注目が集まっています。

5) まとめ

「資産運用」とひと口に言っても、投資を行う人の状況や目的によって最適な投資方法は異なります。
しかし「人生100年時代」を心豊かに生きるためには、老後資金を自助努力で増やさなければいけないことは誰もが同じです。
そのためにも、自身の資産を有効活用して「貯める」から「増やす」試みを今から始めてみませんか。

この記事を書いた人

C+One 編集部
不動産投資、ビル管理、設計、大規模修繕など不動産に関する総合情報を分かりやすい形で提供しています。